「Wing」-35
最終章〜終〜
ここは果ての地、旧ノーザンド王国。あれからちょうど一年が経った。あの後、少ししてからティ・ハザス帝国は崩壊した。元々無理に領地を大きくしていってたらしいので、崩れる時は以外にアッサリと。今は四つの国に別れて、それぞれ協力しながら関係を保ってる。
「あれからもう一年か……」
最近独り言が増えてきた気がする。一人で考え事をする時間が増えたからだと思う。
トントン――ドアがノックされる音。
「クレア様、王がお呼びです」
パパが? 何の用だろう?
取りあえず王室へと向かう。
真っ赤な絨毯が敷つめられた床。シャンデリアが吊り下げられている天井。赤い椅子に座っている父。
「お父様?」
「おお、来たか」
「どのような御用件ですか?」
「今日はお主に紹介したい人物がおってな……」
「え?」
「お主も気に入ると思うぞ。もう直此処へ来ると思うのだが……」
結婚相手? また勝手に決めてきたの?
「お父様……失礼しました……」
父の話を最後まで聞かないで、部屋を後にする。
「パパのバカ……」
ベッドの端に腰掛けてそう呟いた。
この国に来てから今まで一度も結婚話なんてしなかったのに、何で今になって……最近やっと普通に話せるようになってきてたのに……
私が小さい頃、亡くなったママがよく言ってた。ママはパパが好きで、パパもママの事が好きで、だから結婚して私が生まれたんだって……なのに何でパパは私に……
「あ〜あ、なんかやだなぁ……」
経験上、こんな気分の時は何処かへ行って気晴らしでもしたほうがいい。と、言うことで外出決定! 動き辛いドレスから運動に適した服に着替える。ベランダからロープを垂らして、地に降り立った。秘密の抜け穴……はまだ作業途中。なので向かう先は城門へ。
「クレア様、おはようございます」
「おはようございます」
「クレア様、カイザの馬鹿を見かけませんでしたか? あの野郎、またどっかへ逃げやがって……」
だから警備兵がノーヴさん一人だけなのか……
「ううん、見ませんでしたよ」
「そうですか……ところでクレア様は何用でこちらへ?」
「ちょっと散歩でもしようと思って」
「ならば護衛の兵を……」
「あ、結構です。たまには一人で過ごしたいので……」
「前も同じような事を言って一人で出ていきませんでしたか?」
バレてる……どうしよっか?
「あっ! ノーヴさん、カイザさんがあんな所に!」
「何処です!?」
指差した方向を見るノーヴさん。よし、この隙に……
「クレア様、あの阿呆は何処ですか!? ……ってクレア様!!」
我ながらナイス作戦。ノーヴさん、ごめんなさい。
少し走ったところで立ち止まる。もう追って来てないみたい。今日は何処に行こうかなぁ? この間見つけた森の泉でいいかな。綺麗だったもんなぁ。うん、あそこにしよう!
彼と約束した大きな空。今日もご機嫌みたい。