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「Wing」
【ファンタジー その他小説】

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「Wing」-26

第八章〜暴〜




夜中に目を覚ました。目の前に黒い空間が広がっている。喉の奥がすごく熱い。汗の感触が手にある。
今のは、夢だよね? 私が出てなくて此処まではっきりした夢って見たことあったっけ? あの男のコ誰だろ? 何処かで見たことあるような気がするんだけどなあ。

真っ暗な窓の外に広がる真っ黒な世界に、真っ白な月が浮かんでいた。両開きの窓をそっと開ける。暫く暗闇だけの世界を見ていると、目が慣れてきた。深夜の城内は昼間よりも、寂しく見える。微かに揺らめく松明の灯火。誰も通らない中庭の石畳。風も無しにざわめく木々の葉達。目が冴えてきてしまったのでとりあえず散歩に行くことにした。





レオン?
いつも背負っている大きな剣を鞘から抜いて地面に突き立て、それにもたれかけて眠っている。
何でこんな所で? わかんないなぁ。
彼の寝姿を見てると、当然後ろにある剣も視界に入ってくる。これってさっきの夢に出て来てたのとそっくりだよね。そういえばレオンの顔、夢の男のコと似てるなぁ。
俯いてるせいで髪の毛が垂れ下がっている。それが邪魔になって顔がよく見えない。髪をどかそうと、手を触れた瞬間。突然彼の目が開き、それと同時に押し倒された。そして目の前に、月の銀よりも眩しい物体が迫ってくる。
いきなりのことで悲鳴も出せなかった。刺される、と思った瞬間、ホントにあとちょっとのところでそれが止まった。
「……クレア、か?」
目の前のそれを微動だもさせないまま彼が尋ねてくる。
「う、うん……」
「……近寄るなと言った筈だ……」
相変わらず私に覆いかぶさったまま、努めて冷静に、でも幾分怒気を孕んだ声で彼が言う。
「ごめんなさい……」
「……次は止めれるか分からないぞ……」
ため息をついて、ようやく妖しげに光る物をどけてくれた。けど……

「何であそこまでしたの? 私、そんなに悪いことした?」
落ち着いたら怒りの念が腹の奥底から湧き上がってきた。ええ、沸々ときましたよ!!だって普通そうでしょ? 確かに近寄るなって言われたけどあんなひどい事までしなくてもいいよね?

「……近寄るな……と言った筈だ」
「……」
有無を言わさぬような視線。見上げる空に煌めく星達も何故か泣いてるように見える。何も言えない。

「……今の俺は危ないんだ……」
立ち上がってもとの位置に座り込み、至って普通の声色で話し出した。
「……抑えているけど、いつ止まれなくなるか分からない……」
俯いているので表情は伺えないけど、嬉しそうな表情とか元気っぽい顔はしてないと思う。
「それってどういう……」
「そういう訳だ……もう俺に近付くな……」
話の内容がイマイチよくつかめなかったので、理由を尋ねようとしたけど、言葉の途中で遮られてしまう。それっきり、何を話し掛けても返事を返してくれなかった。

後日、この夜の言葉の意味を知ることになる。




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