黒の魔導師-8
「わりぃ、大丈夫か?」
魔力を吸われるキツさを知っておきながら、やり過ぎてしまったアースはバツの悪い思いをしてキャラを覗き込む。
「…ん…大丈夫…」
「!!!」
顔をあげたキャラの潤んだ目を見た瞬間、アースの理性がぶっ飛びそうになる。
アースは飛び散りそうな理性をなんとかかき集めて、襲いたくなる衝動を抑え、頭を振って邪念を追い払うと、剣を握り直して立ち上がった。
「隠れとけよ」
キャラに注意したアースは、火蜥蜴の方へ歩いて行く。
近づいてくる人間に気づいた火蜥蜴は、ますます怒り狂い、自由に動く右腕と尻尾で攻撃してきた。
アースは瞬時に軌道を読むと、尻尾の攻撃をギリギリでよけ、腕の攻撃は剣で受け止める。
ガキンッ
「っ…」
爪と剣が激突し、ズズッと足が後退するがなんとか踏みとどまると、アースは火蜥蜴に話しかける。
「ちっとばかし大人しくしててくれりゃ、自由にしてやるぞ!?」
そう言うアースに、火蜥蜴は容赦なく炎を吐き出してきた。
「…だよなっと」
チッと舌打ちをすると組んでいた剣を捻って、火蜥蜴の右腕をはねのけ、その場から飛び退く。
瞬間、先ほどまでアースがいた所に炎が降り注いだ。
「うわっち!」
熱風をよけつつ、片手をついて着地する。
そこへ、間髪入れずに火蜥蜴の尻尾がブンッと襲いかかってきて、アースは横殴りに見事に吹っ飛ぶ。
「!」
キャラは身を乗り出して、アースが落ちた所を凝視する。
「…ってぇ…」
間一髪で結界を張り、激突の衝撃は緩和されたが、尻尾の攻撃は防ぎきれず、左のこめかみあたりから血が流れる。
鬱陶しそうに袖で血を拭うアースは歯噛みする。
(意外と強ぇなぁ…)
それでもやるしかないか、とアースは立ち上がり、再び火蜥蜴に向き直る。
アースの姿を確認したキャラはホッと胸を撫で下ろした。
再び近づくアースの動きに反応した火蜥蜴は、尻尾を振り回して攻撃してくる。