黒の魔導師-7
「いや、悪かった。忘れてくれ。んじゃ、わりぃけど山を降りて魔法学校の学長に報告して来てくれないか?
できれば、急いで」
ダメもとでやるしかない。
早くしないと山が全焼するし……解除中にベルリアが間に合えば大丈夫だろう。
「待って」
行こうとしたアースをキャラは引き止める。
「いいよ。魔力分ける。」
「はぁ?」
思わず間の抜けた声を出したアースに、キャラは憮然として答えた。
「別に大した事じゃないだろ?報告に行くよりそのほうが早い」
まあ、確かにそうなのだが……中々思い切りのいい奴……。
「…ほんじゃ、遠慮なく」
アースは手を伸ばして、キャラのフードを後ろに落とした。
初めて目にしたキャラの素顔に、アースの心臓がドクンと跳ねる。
中性的な顔立ちに、1つに括ったサラサラのプラチナブロンド、緑色の目は吸い込まれそうなほど深い色をしている。
(…うっわ、すっげぇタイプ!むっちゃくちゃ好み!超ストライク!)
なのに……なんで男なんだ……、とアースは落ち込む。
突然、肩を落としたアースにキャラは首を傾げる。
(……それ、やめれ)
男のクセに可愛いすぎ。
(落ち着け!相手は男だ!男に手を出すほど飢えてはいないハズだろ?)
……と自分に言い聞かせるが、早鐘を打つ心臓は収まってくれそうにない。
「おい?」
いったい何を固まっているんだ、とキャラに声をかけられアースはハッと我に帰る。
「あ…いや…わりぃ…」
気を取り直してキャラの頬を片手で包むと、少し緊張しつつ顔を傾けて唇を重ねる。
(…!!うっわっ!なんだ……これ?!)
魔力を吸い出したアースは驚愕する。
(……美味い…!)
今までただの力だと思っていた魔力を、美味いと感じたのは初めてだった。
「…ん…ぅ…」
声を上げたキャラに、アースは吸い過ぎた事に気づいて慌てて唇を離す。
「っは…はぁ…」
離してくれたアースの腕にしがみつきながら、キャラは肩で息をする。