黒の魔導師-20
「喰ってみろ」
キャラは両手を合わせて、いただきます、と挨拶するとパスタを一口。
「……!うまっ」
「だろ?」
アースはキャラの反応に満足して、自分も食べ始める。
「うん。上出来。流石だ俺」
自画自賛するアースに、キャラは笑いながら食事をする。
「ところで、お前ファンの国の出身か?」
アースの突然の質問に、キャラは吹き出しそうになりながら目を向ける。
「な…なんで?」
水を飲みながら聞き返す。
ファンの国は、ゼビアの遥か東にある島国で、独特の文化を持っている。
「あ?だって食事の前に、両手合わせてたろ?」
ありゃ、ファンの風習だろう?と言うアースにキャラは、あちゃー、という顔をする。
「あ〜うん、まあ、一応…」
なんとも歯切れの悪い回答に、少し疑問を持ったアースだったが、言いたくない事でもあるのだろう、とそれ以上は追求せずに食事を続ける。
食事が終わると2人は魔法学校へ行き、学長室に入る。
「学長、連れてきたぜ」
アースはノックもせずにドアを開ける。
「ああ、ありがとう。
君がキャラだね?昨日はうちの魔導師が世話になった。」
椅子から立ち上がった学長のベルリアは、そう言って頭を下げる。
キャラは両手を振りながら慌てて答えた。
「いえっ!何もしてませんからっ」
「いやいや、魔力を分けるという行為だけでも助かったんだ。
本当にありがとう」
ベルリアはそう言ってキャラを応接用のソファーに座るように案内する。
アースは入り口近くの壁に、腕を組んでもたれてた。
魔力を分ける行為、という言葉に少し赤くなったキャラに、ベルリアは封筒を渡す。
「荷物も燃えてしまったと聞いたよ。
これは、お礼だ。受け取ってくれ」
渡された封筒の中には、見るからにかなりの額が入っている。
「こんなには貰えませんっ」
恐縮するキャラにアースが口をだす。
「貰っとけ。あって困るもんじゃねぇし、それだけの事をお前はしてくれた」
キャラは振り向いてアースを見てから、ありがたく貰う事にした。