黒の魔導師-10
「あ……目」
違和感の正体はアースの目の色だ。
先ほどまでは金色だったのに、今は黒い。
「あ?ああ、なんでか魔力使う時だけ金色になんだよ」
アースは腹筋を使って起き上がると、キャラに目を向けて続ける。
「気持ち悪いだろ?」
それこそ小さい頃はよくいじめられた。
勿論、倍返しだったが…。
「え?いや、そうじゃなくて…なんか…綺麗だなって…」
金色のも黒いのも…と言うキャラの言葉を聞いてアースは思わず赤面してしまい、慌てて横を向く。
「そりゃ、どうも」
なんだか照れてるアースにキャラは可笑しくなり、クスリと笑う。
「あ。ここ、血出てるぞ」
アースが横を向いた事でこめかみの怪我に気づいたキャラは、懐からハンカチを出して傷を押さえる。
「って」
すっかり忘れていた傷に触られて、アースは顔をしかめた。
キャラは顔を寄せて傷を見ると、大したことはないみたいだ、とにっこり笑う。
こんな至近距離で、そんな笑顔をみせられてアースの理性が勝てるはずもなく……。
(ああ、もう、どうなってもいいや……)
覚悟を決めたアースは、傷を押さえているキャラの手を、上から握り返す。
「?痛いか?」
問いかけるキャラに、困ったような顔をしたアースはゆっくり近づき、そっと唇を重ねた。
顔を離すとキャラが目を見開いて固まっている。
「ふっ、こういう時は目ぇ閉じろよ」
「えっ?えっ?えぇ?」
吹き出すアースにキャラはパニクる。
「落ち着けって」
アースは笑いながら言うと、もう片方の手でキャラの後頭部を引き寄せ、再び唇を重ねてくる。
「…んっ…ちょっ…と…ま…」
キャラは左手でアースの胸を押すがびくともせず、ますます濃厚になってくるキスに抵抗さえ出来ない。
アースはキャラの唇を舌でなぞったり、角度を変えて味わったり、逃げるキャラの舌を捉えて絡めたりと、キスを楽しむ。
「んぅ…っは…やめっ……んっ」
抵抗するキャラを逃がすまいと、握っていたキャラの手を離すと腰に手を回して引き寄せる。
(……ん?)
妙に細い腰に、今度はアースが違和感を感じる。
唇を離してまじまじと顔を見るアース。