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スージの森
【家族 その他小説】

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1・霧-2

〜〜〜〜〜

学校も冬休みになった、12月21日の夜−
ケーキを山の様に焼く、1年で一番忙しいクリスマスまであと4日。
年内最後の休みの前日、妹のフィアがとんでもない事を言い出した。


「ぴ、ピクニックだって?何でまた急に?」
「前から行きたかったんだもん。ねえ、パパ、ママ」
「いきなり言い出すからな、フィアは。はっはっはっ」
「そうよね、もう少し考えて言った方がいいわね。うふふ」

本当に突然だ。
店が休みの日はどこかに行きたいねって、前から言ってたけど。
それにしても、前日の、しかも晩ご飯が終わった後に言うなんて。
せっかく父ちゃんに認めさせようと、旨いパンを焼きまくるつもりだったのに。

「じゃあ明日早いからもう寝よう、お兄ちゃん」
「おいおいちょっと待て、話が早すぎるぞ。どこに行くのか決まったのか」
「あ、そっか。まだ言ってなかったね。スージの森だよ!」

車で30分もあれば行ける、近場の森。
春や秋にはピクニック、夏は冷たい川で泳げる、この街に住んでいる子供にとっては1年の殆どを通して遊べる場所だ。
ただ、冬はあまりあそこに遊びに行く子供はいない。
せいぜい大人同士がバーベキューを楽しむくらいで、俺の友達にはこの時期にピクニックに行くやつはいないと思う。
木だって枯れてるだろうし、おそらく1年の中で一番寂しい景色になるんじゃないだろうか?

「こんな寒い時に行かなくてもいいんじゃないか、フィア。ピクニックなら春頃がいいよ、あったかいしな」
「だって、全然お休みが無いんだもん」

まあ・・・仕方ないか。
俺は正直言うとパンを焼く方が大事だが、フィアは家族と遊ぶのが好きだからな。
普段学校から帰ってきて、いつも文句を一切言わず店の手伝いをしてるんだ。
戦争のクリスマス前にちょっと息抜きも必要かな・・・・

父ちゃんや母ちゃんがフィアがピクニックに行きたいというのを断らなかったのは、俺と同じ事を考えてるからかもしれない。

「お兄ちゃん、行きたくないの?たまには遊びたいよね」
「・・・仕方ないな。まだまだお子様のフィアに付き合ってやるか。寝坊したら置いてくぞ」
「あー待ってよお兄ちゃん!まだお風呂も入ってないのに」

ピクニックなんて久々だな。今年の春に行ったきりだ。
ちょっと寒いだろうけど、冬に森に行くってのもいいな。あまり人がいないから静かだろうなきっと。



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