EP.FINAL「良かったよ。当たり前じゃん」-3
「こっち、信之介」
手招きされたので仕方なくついていく。
前に連れて来られた時は今より楽しい気分だった様に思える。
砂場を通り抜けて、姉ちゃんはジャングルジムに攀じ登った。
まさかついてこい、なんて言わないよな?
「早くしろ、信之介」
姉ちゃんは頂上に腰を下ろして、また手招きしている。
はあ、やっぱり登らなきゃダメ?はい、分かりました。
こないだの時みたいにふざけたりしないかな、と思ったけどそんな心境じゃ無さそうだ。
・・・凄いな、姉ちゃんは。
よく自分を滅茶苦茶にした相手と2人きりになれるよ。俺が姉ちゃんだったら、顔だって見たくない。
しかも、全然まだ時間が経ってないのに。
ようやく登り切って隣に座ると、姉ちゃんは前を向いたままそっと口を開いた。
「引きずる事じゃねえだろ、信之介」
・・・またその話か。
「いいだろ、姉ちゃんとエッチしたかったんだろ?だったら喜べよ、あの時マジで気持ち良さそうだったよ」
「姉ちゃんは何ともないのかよ、弟なんかにやられて。嫌じゃないのか」
「良かったよ。当たり前じゃん」
姉ちゃんは平然と
いや・・・自然にそう答えた。
「気付いてないっしょ、夏休みに何で女らしい格好してたのかなんて」
覚えてるよ。
凄く可愛くてまともに見る事が出来なかったから、姉ちゃんにキモいって言われた。
「でも、お前は結局エロい事しか考えてなかったって訳だ。だから、寧ろ誇れ」
「ね、姉ちゃん?」
「私とエッチしたって時々思い出してにやにやするなり擦るなり好きにしろ。でも、今後は口に出すな。表面上は忘れたふりしろ」
姉ちゃんは、姉ちゃんなりに俺を慰めてくれてるのだろうか。
ついさっきまではもうお前なんか弟じゃない、と言いだしそうな雰囲気だったから驚いている。
「私は・・・弟として、これからも好きでいるよ。だから・・・昨日の事は、もう2度と口にしないって決めた」
こんな俺でも弟としてみてくれるのか。
なんか、上手くいえないけど・・・ありがとう。ありがとう、姉ちゃん。
「だから、誓え」
そう言うと姉ちゃんは唇を突き出してきた。
・・・こ、ここで催促かよ?何考えてんだ。
仕方ないな、拒否したら突き落とされそうだし。
俺は姉ちゃんの唇に、自分の唇を触れた。
(姉ちゃんとキスしてるぅ・・・あっ、はぁあ・・・・)
吹き付ける風の寒さも、この時だけは感じなかった。
「・・・あっ、このやろー、長いんだよぉ」
唇と唇に繋がる唾液の糸に、姉ちゃんが顔を赤くした。
これで、俺達は姉弟。
これからもずっと、変わらないまま。
誰にも言わない、言えない秘密を互いに抱えた2人。