せみしぐれ〜君といた夏〜-6
「んはぁ…!そ、そうよ」
「この、赤黒い火傷みたいなのは?」
「あぁん!な、舐めちゃダメ…!それは、煙草を押し付け…られて…あぁ!」
こんな最中だけど…胸が、苦しくなった。
――俺の腕の中で、俺の唇で、舌で感じて声を上げるあなたは、それでも、あなたを傷つける夫を愛しているのですか?
…聞けるわけない。
俺だって、今、こうしてあなたを傷つけているのだから。
愛おしさと快感と、罪。
揺れ動き膨張する、俺の中のカオス。
「ん!はぁ、あぁ…ぅ!」
「気持ちいいの?」
「ち、ちが…う!くぅ…」
「本当に?…こっちも?」
「…あ!んぁ!」
ショートパンツの裾から忍ばせた指は、下着をすり抜け、いとも簡単に薄い茂みの奥…熱くぬかるんだ泉に届いた。
―――グチュリ。
「あ、あぁ…いや…ぁ、だ、だめ!イっちゃ…う…!!」
グチュ…グチュ…。
「んぁ、はぁぁ…あ、イ、イクぅっ…ああぁぁぁ!!」
2本の指を受け入れ、数回掻き回したところで、あの人の全身はつま先まで硬直し、その後、小さな悲鳴とともに崩れ落ちた。
…気が付けば、いつの間にか雨は止んでいて、俺とあの人の乱れた呼吸の音は、外から響いてくる溢れんばかりの蝉時雨にかき消されそうだ。
「…ごめん…なさい…」
「何に対する謝罪?」
「よくわからないけど…」
「謝るくらいなら、ここで終わりにする?」
「それも…ごめん…」
俺は、ここまで自分勝手な男だったのか?
でも、このままでなんて終われるはずなかった。
既に、痛いくらいまでに固く膨らんだ俺自身。
全身を駆け巡る疼きは、あの人とひとつに繋がることでしか治まる術を知らない――……。
――フゥ…。
ため息がひとつ、あの人から漏れた。
「…どうしたの?」
「ん…。きっと、ずるいんだね、私も」
「どういうこと?」
「そういうこと」
怪訝な顔をした僕に、あの人はふんわりと、でも、どこか妖しげな笑みを浮かべて。
次の瞬間、首もとあたりにゆるく引っかかっていたTシャツとブラジャーを脱ぎ捨てた。
予想外の出来事に、呆気にとられて間抜け面の俺をしり目に、その指は、今度は自らのショートパンツと下着に掛けられて。
ひと思いに引き下げられた布地が床に落ちれば、そこには、一糸纏わぬ姿のあの人が…いた。
情けないことに、金縛りにあったみたいに固まっていた俺は、それでも、目の前のあの人に向かって無我夢中で腕を伸ばす。
スローモーションのように見えたもどかしいその動きは、実際には数秒だったのだろうか?
やがて、俺の指先は、再びあの人の白い肌にたどり着き――手繰り寄せる、その小さな身体。
柔らかなその全てを宝物のように慈しみたかったけれど、残念ながら、その時の俺には、心身ともにそんな余裕も時間もなかった。
ただがむしゃらに、あの人の首筋に、胸に、腹に舌を這わせ、舐め、そして吸い上げて。
そのたびに跳ね上がる肢体を押さえ込み、聞こえる嬌声に心を震わせて。
そして。
爆発寸前の俺自身を抑えつけていたジーンズとトランクスを放り投げた。