せみしぐれ〜君といた夏〜-5
「あっ、く、くすぐったぃ…!」
細く折れそうな両手首は、俺の片手で押さえることができた。
そのまま持ち上げた腕、そして肩へと這わせる唇。
やがて、苦悶の表情を浮かべる顔に近づく。
…お願いだ。
そんな顔をしないでくれ。
「んぁっ…耳ダメ…舐めないで…」
ぴくりと震える身体。
白い肌に赤みが増したように見えるのは、俺の気のせいだろうか?
閉じた瞼に軽く口づけし、鼻の頭を甘噛みする。
顔にかかる前髪をかき上げれば額には汗が浮かんでいて、そっと拭うと、あの人が目を開け俺を見つめた。
「…同情が、欲しかったんじゃないんだよ?」
「同情なんかじゃないよ」
「だったら…何?」
「何だったらいいの?」
その瞳が、悲しげに揺れた気がした。
ならば、この想いを、この行為を、何と呼べばいいというのか?
俺は、16歳の高校生で。
あなたは、7歳も年上の人妻なのだ。
俺は、自分から投げかけたはずの質問の答えを聞かないまま、あの人の首筋に吸い付く。
どうか、悲しい傷痕が消えるようにと思いを込めて。
どうか、心から笑える日が来ますようにと願って。
そうして、心の奥底で、自分のずるさを認めながら。
「あぁ…っ!」
流れて鎖骨のくぼみに落ちる汗を舐め取ったら、小さな悲鳴が漏れた。
荒くなる息遣いに揺れる胸の膨らみ。
Tシャツの上からブラジャーを押し上げ、解放されたその双丘に指を這わせれば、既に、その頂は布地の上からでもわかるくらい固く尖っていた。
「んん…っ」
包み込んだ俺の手の力によって形を変える、その柔らかさと温もり。
初めて触れた女の身体の衝撃は、それだけで俺の全てを暴発させてしまいそうだった。
「ね、もう止めよう…。こ、こんなことダメ…ぁ、ん…はぁ…」
力が入らなくなったのか、寄りかかっていた壁づたいにズルズルと崩れ落ちるあの人は、それでも、未だ残る理性に殉じた言葉を繰り返す。
床に倒れ込んだあの人が、せめて辛くないようにと、俺は、脇に落ちていた俺のTシャツを下に敷いた。
懇願の声に耳を傾けない俺のこんな気遣いは、きっと偽りの優しさなんだろう。
雨と汗が滲みたTシャツに張りつくあの人の胸の頂を、俺はそのまま口に含む。
舌で舐めあげ転がし、唇で吸い付いて。
感じているのだろうか、その都度小さく跳ねる身体。
荒くなる息遣いを必死に押し殺すあの人は、自らの両手で口を塞いでいた。
「…手、外して。声が聞きたい」
「――――……!」
けれど、その手は外されないまま左右に振られる首。
それならば。
「あ、やめて!!」
驚いたあの人がその手を伸ばすより一瞬早く、俺は裾が乱れたTシャツを捲り上げた。
露わに零れ落ちた真っ白な肌と、その雪原に点々と散らばるいくつもの傷痕。
「…見ないでよ…」
「どうして?さっきは自分から見せてくれたのに」
「こんな風に見てもらいたかった訳じゃないもの…」
「それでも…俺は、きれいだと思う」
「…え?――あ、あぁ!」
隔てるもののなくなった、あの人との空間。
俺は、再びその柔らかな双丘に顔を埋め、存在を誇示するかのように固く尖った乳首を口に含む。
「はぁ、はぁっ…ん」
やがて、頑なに下唇を噛み続けていたあの人からも、快感に喘ぐ声が漏れる。
…もっと。
もっと、聞かせてほしい。
「この痣は…殴られたんだよね?」
胸を這っていた舌を、下腹部へと下ろしていく。