第一章 裏切りの朝-6
古びた和風の室内に、似つかわしくない大きなベッドがあって場所を占拠している。
僕がさっきまで、母と肩を並べて寝ていたそこに、骨張った叔父が一糸纏わぬ全裸で立っていて、その腰の前には、鋭くペニスを反り返らせて勃たせてあり、それに、母が足元から縋り付くようにして指を絡め、愛しげな目をして舌を這わせていた。
「すごく欲しいのよ・・わかるでしょ」
艶っぽい母の声。
彼女は恍惚とした表情を浮かべて叔父を見上げる。
淫欲に陰った媚びる視線。
叔父の、僕のとは比べものにならないくらい大きく、鋭く、カリの立派な、まるで凶器のようなそれ。
それに、母はしなやかな指を淫靡に絡め、舌を這わせて、逆の手は、黒のショーツの上から自分の芯を、いやらしい女の手付きでまさぐって、焦れったく腰を揺らしている。
その遣り方、その表情。
少なくとも僕は、そんな母を、見たことがなかった。
僕は奮える息を噛み殺しながら視線を外し、静かに踵を返して部屋を出た。
古びたホテルの壁に指を這わせながら、足早に絨毯を蹴ってエレベーターに乗り込む。
『すごく欲しいのよ・・わかるでしょ』
ネットリとした母の声が、耳の奥へこびり付いて拭い去れない。
嫉妬心よりも寧ろ、自分の力が及ばないことへの苛立ちが、僕の胸の中で煮え滾り、視界をグラグラと歪ませていた。
利江を誘って車に戻ろう。
あれを利江に見せてはいけない。
恐らく利江の亭主もまた、義理の姉、つまり僕の母を前にいつもと違う顔をしているのだろう。
いつもと違う指遣い、いつもと違う勃起、いつもと違う情熱。
僕は利江を連れて、コートとは反対側の山へ入ろう。そこで叔母を、利江を、滅茶苦茶にする。
知識の限り、持てる力の限りに叔母を剥き、虐め、その芯に僕を深く深く刻みつける。
僕が母よりも利江のことを、どれだけ深く愛しているかを、情熱のすべてで告白し、そして最後は彼女の中へ、たっぷりと注ぎ込むのだ。
ロビーに着くと、利江は喫茶コーナーで一人、アイスコーヒーを飲んでいた。