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不確かなセカイ
【ファンタジー その他小説】

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不確かなセカイ-4

 翌日から彼は消えた。死体が見つかる、見つからないの問題じゃなく、彼の存在自体が消えてしまったのだ。クラスメートは彼の存在を忘れ、昨日まであった彼の机もなくなり、担任は翔太の名前を呼ばなくなった。誰に問いただしても『そんな人は知らない』と、不審がるような視線を僕に向けるのだ。あんなにも見事にクラスの中心的役割を果たしてきた翔太は、誰の心にも残っていなかった。そして不思議なことに、僕自身、彼のいないクラスにあまり違和感を感じなかったのである。僕は混乱を極めた。一体何がおかしいのか、それさえも判別できないほど。
昨日までの友人を誰一人覚えていない知人が異常なのか。
誰も知らないクラスメートとずっと一緒だった僕が異常なのか。
翔太の存在を消したこの世界自体が異常なのか。
こんな世界の中で、彼を忘れられない僕が異常なのか。
この日を境に、僕は何も信じられなくなった。一体何が現実なのか。

確かに翔太はいて、確かに翔太はいない。
とても正気ではいられない事実がここにある。

 気が付くと、屋上に一人立っていた。相変わらず、冷たい風が彷徨っていた。あの日のような心惹きつける景色ではない。今にも大粒の雫を落としそうな薄暗い空が、頭上に広がっている。ここから全てが狂いだしたのだ。僕はそこで彼の言葉を反芻することにする。
『脇役』、『登場人物に過ぎない』・・・彼は自分がこの世界で主役ではないと考えていた。
そもそも彼は主役だとか脇役だとか、そんなことを気にする男ではなかったはず。校内トップの成績を取っても奢らず、誰とでも気軽に話をする奴だった。彼が言う主役とは誰なのか。ぽつりと、雨が落ちる。もう考えるな、と誰かが囁く。分からない。いくら考えても分からない。僕は、涙を流し続ける天を仰いだ。
「結局、翔太、お前は俺の中にしか生きていなかったのかなぁ。」
だとしたら、狂っているのは僕なのだろう。僕だけが、違う世界を生きていたのだろう。

―――― 僕だけが?

それは、不意に浮かんだ非常識な結論。本降りの雨に打たれ、脳の回路がショートしてしまったのか。だから分かってしまった。翔太が僕に伝えたかった事。彼が僕に示そうとした現実。
翔太は僕が作り出した創造上の人物。
これは僕が作り出した創造上の世界。
つまり・・・このセカイの・・・主役というのは・・・・


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