EP.5「な、なんですと?!」-11
<Midori's Side>
日曜日の夜。
それは1週間で一番憂鬱な時間帯。
また明日からかったるい学校かと思うと、泣きたくなる。
「はあー、明日なんか来なくていいな。時間なんて止まっちゃえばいいのに」
部屋の中に自分の言葉が虚しく響いた。
マジで、このまま夜が明けなくてもいいや。
信之介でもいればいじってやって少しは気が紛れそうだけど。
この時間帯が嫌いなのはガキの頃から変わってない。
・・・つうか、早く帰ってこいって、愚かな我が弟よ。
おかしいだろ?姉ちゃんさ、お前の顔が凄く見たくてたまらないんだよ。
声が聞きたいんだ。
何かここ最近、無性にお前が愛しくて仕方ない。
電話しようにも何故か躊躇うのも初めてだし、どう対処したらいいのかな。
・・・信之介に不機嫌な態度されるのなんて、とっくに慣れてると思ってた。
でも、こんなに気持ちが揺らいで不安定なのは、明らかに動揺している証拠だ。
あいつが不機嫌な原因すら未だに探れないなんて、自分がこんなに弱虫だとは思わなかった。
「あの野郎、今頃どんな顔して寝てるんだか。いや、まだ寝るには早いか」
確か寮の消灯は23時だったから、まだ結構時間はある。
じゃあ、友達と話してる時間だな。
「・・・?!」
急に携帯が鳴った。
こんな時間に誰だと思いながら画面を見ると、なんとその弟からで・・・
「信之介?!」
¨ごめん、こんな時間に。寝てたか?¨
「い、いや、寝てない」
¨そうだな、姉ちゃんは夜行性だもんな¨
この憎まれ口、懐かしい。
どうしてそっちから電話してきたの?私にとっては珍しいなんてものじゃない。
¨あの、さぁ。冬休みなんだけど・・・¨
「こっちはまだ1ヶ月以上は先だよ。そっちはもうそうなの?」
¨いや、違う。いつからって事じゃなくて・・・¨
歯切れの悪い弟の言葉に、ちょっともやもやしてしまう。
昔からこういう喋り方はやめろって教えてきたのに、とうとう治らなかったか、こいつは。
一体冬休みがどうしたんだ、はっきり言ってくれ。どんな答えでも多分今は怒らないはずだから。
¨そっちに、帰ろうと思うんだ¨
「な、なんですと?!」
¨そんな驚くなよ。もしかして帰っちゃまずいのか¨
「だって、夏休みの時に言ってなかったか。冬休みは期間が短いから、そっちに残るかもって」
¨んー、そのつもりだったんだけど・・・¨
またも歯切れの悪い返事をしてきた。
どうやら、心境の変化を促す何かがあったらしい。