ZERO-9
【4】《初体験(?)〜その壱〜》
眠れん…。これでどうして眠れようか?
まさかとは思ったが都と同じ部屋で寝ることになろうとは…。
俺が都のベッドを借りて寝るのに都を追い出すわけにはいかないし、かといって俺がベッドもろとも部屋を出るのは骨が折れる。
それにしたって今日いきなり現れた男を家に泊めることさえ不思議なのに、同じ部屋に寝てしまう都の神経はどうなってるのだろう…。
俺だってまさか寝込みを襲う気はこれっぽっちもないのだが、ここまで来るとこっちの方が気にしてしまって寝付けなくなる…。都は寝れているのだろうか?
「都さん?寝ちゃいました?」
…反応なし……?
「ねえ、ユウジ。…手掛かり在るかもよ」
「起きてたんですか…。っていうか早く名前覚えてくださいよ。器用に正解を外すんだから……」
起き上がって都を見ると目は閉じている。
「最初に会ったときにおじいちゃんがその…、裏の人に会ったって言ったっしょ…」
そうだ。あの時は服を着てないことに気が行ってたけど…。
「あの人はおじいちゃんが北都に連れて行ったって言ってた…」
「ホクト?」
「北の都って書くの。北西連合の中心国よ…」
……都のその後の話によると、北西連合とは北方の都市国家の集まりで、そのような集団は5つほど有るそうだ。
北都は人口約2000万の巨大都市だ。島の面積が群馬県ほどという事を考えると凄い人口密度である。島全体が東京23区の様になっている感じだ……。
「北都ってココから遠いの?」
「まぁ、一時間って処だべ」
「どうして君のおじいさんはその前に来たって人をそこに連れて行ったんだろう?」
彼女はちょと考えてから言った。
「そうさねぇ。私はたいして詳しくは聞かなかったし…。ココから近くで人が多いから手掛かりがあると思ったんでないべか?」
「そうか……。ところでそれいつの話?」
「え〜と、私が産まれるちょっと前だって言ってた。その人が今も北都にいるんなら50歳くらいになるべな」
そうか…。まずはその人かその足跡を探すかな。なんだか針の穴ほどだが光明が見えた気がする。
「明日行ってみる?」
「いいけどそんなに暇なの?」
「悪かったわね。麦の刈り取りはまだだし、やることなんて大して無いのよね…」
「そうそう、麦の刈り取りって一人で出来るの?」
いくら島が小さいといっても一人で出来る様には思えない。
「業者を頼んでコンバインで刈るのよ。私がやることなんてほとんど無いわ」
「そうか…。そうと決まれば早く寝なきゃな」
「うん。おやすみ…」
……何だか最初の心配は無くなってすぐに寝付けた。
ただ疲れただけかもしれないが……。