EP.4「嬉しい事でもあったんだろ」-7
「凄いじゃん!やるね、岡山くん」
「・・・へへっ」
引きつった笑顔になっているのは自分でもよく分かる。
なんて顔をしてるんだろう、もっと2人で遊ぶのを楽しまなくちゃな。
負けて悔しいとか、やめよう。
「もー、力入りすぎ」
高梨さんが歩いてた時に貰ったティッシュで、俺の顔を拭いてくれた。
汗までかいて、本当に無駄に力み過ぎだな。俺は空回りをしに来たわけじゃない。
・・・こうしてると姉ちゃんに顔をごしごしされてるみたいだ。
(バカだね、お前は。遊びなのにむきになりやがって、この間抜け)
また、姉ちゃんの事を想像してる。
もう忘れよう。さっさと頭から追い出さなくちゃいけないんだ。
そうだ、俺がこんなだから楽しめないんだよ。
次はダンスゲームで高梨さんと対戦する事になった。
と言っても、一緒に踊ろうとしたが協力モードが無かったので、対戦モードを選んだだけだ。
「楽しくやろうね、岡山くん」
「うん」
拳を出してきたので、同じく拳で応えた。
曲が流れ始めるとさっきのリズムゲームみたいに画面に記号が流れてきた。
思わず手で叩こうとしたがこれは違う、足元のパネルでやらなきゃいけないんだ。
「おっ、と、んっ!くっ、は、はぁっ!」
画面に記されている矢印に従い、記されている方向のパネルを踏んでいく。
取りこぼさない様に必死で足踏みを繰り返しながら、画面だけを見つめていた。
「必死ー、顔も動きも」
すると横からつっこまれてしまった。
高梨さんは滑らかな動きで順調にダンスをこなしており、必死な俺とは偉い違いだ。
ダンスと呼ぶには直線的でぎこちない動きの俺に、その運動神経を分けてほしい。
俺はただ矢印を指示の通りに叩いてるだけだ。まるで、足でもぐら叩きをしてるみたいだな。
いけない、楽しもうと言ってたのにこのザマとは。
まず一曲終わったが成績は・・・ああ、やだ、見たくない。認めないぞこの格差など。
「もう一回やんない?」
「えっ。あ、あの」
「次は違う曲でいこうよ」
「そ・・・・そうだ、ね」
見てるよ、と言いたかったがもう始まってしまった。
仕方ない。今更降りるのも格好悪いし、次こそはもっと楽しくダンスしてやる。
そうするにはただ画面を見てるだけじゃ難しいな。
だったら、高梨さんの方を見ていればいいんだ。
横で踊る彼女は優雅にステップしている。
跳ねる度に黒い髪が柔らかく浮かび上がり、周りに爽やかな風が吹いてるみたいだった。
その横顔はとても楽しそうで、眩しくて・・・
踊る合間に見るつもりだったが、つい見入ってしまった。