未来-5
「……ありがとう」
そう言ってアイツも、俺を抱きしめてくれた。
「さて、丁度良いから言っておこうかな」
アイツの耳元でそう言い、俺はアイツの真正面立ち目線を同じ高さに持ってくる。
「何?」
「ん、一度しか言わないからな。ちゃんと聞いてくれ」
「うん」
「こんな俺だが、君と……未来(みく)と結婚を前提に付き合いたい」
そう言うとアイツは、未来は今まで以上に涙を流した。数分間涙を流し、落ち着くとこちらを真剣に見据えた。
「こんな、私ですが宜しくお願いします。遥」
「こちらこそ、未来」
それから二年後。
相変わらず未来の病は、癒えていない。それでも、入院当初の頃よりは体調も回復しており入院の必要も無くなった。
そして今日は、俺たち二人にとって大切な記念日俺の姿は私服ではなく灰色のタキシードを着ている。
大学も無事に卒業し、就職もすることが出来た。
今は、社会人一年目でなにかと大変ではあるが未来がこうして俺の隣にいてくれる。
扉を叩く音がする。
「はい?」
扉を開くと未来がそこにいた。今まで見ていた中で一番綺麗な笑顔をしている。
杖をつきながら、未来は入ってくる。
「遥」
「何だ、未来」
今では、未来をアイツとは呼ばず名前で呼ぶようになった。
「んふふ」
そう笑って未来は、俺に抱きついてきた。
「ちょっ!!」
俺は、赤くなりがらもしっかりと抱きしめた。
「こんな私を愛してくれて、有り難う」
「おいおい、未来。未来は今からなんだ。有り難うは、早いし。言っただろう、それに俺は未来だからこそ愛しているんだぞ」
そう言うと今度は未来が顔を赤くした。
「ふふ、それでも有り難う」
「おう」
そう言って俺は、青空を眺めた。
未来も俺と一緒に青空を眺めた。
「過去があるからこそ、現在(いま)がある。現在(いま)があるから未来があるんだ」
「うん」
これからの未来は、数多くあるがそんな未来に怯える事なく前に進もうと再度心に決める。
「行こう、未来」
「うん」
未来を、歩くよう俺たちは新たな一歩を踏み締めた。
終わり