見習い魔女の一日-2
「そこのけそこのけ、お馬、じゃなかった、箒が通る〜〜!!」
おそらく彼女は速度違反だ。
と、その時。
「だずげでぇぇ〜〜…」
誰かの悲鳴が聞こえた。セアラはたっぷり3秒してから止まった。
「一体、何?何の用?私は今、とおーっても急いでいるのよっ!3秒以内で答えなさい!」
セアラは大声を張り上げながら声のした方を振り仰ぐ。すると、8歳程の男の子が、8階建ての建物の窓から落ちそうになっているのが見えた。それに気付いた通行人の何人かは、それを指差して立ち止まっている。
今日はなんとも運の悪いことに風が強く、男の子は風に煽られて今にも落ちそうだった。……というか、落ちた。
街のあちこちで悲鳴があがる。それから先のセアラの行動は早かった。セアラはぐいっと箒の先を建物に向けると超猛スピードで飛んだ。箒から身を乗り出したセアラの指が、落下してゆく男の子の腕をとらえる、そして素早く体に手をまわして抱き止める…。男の子は、当然のごとく気絶していた。
「ぎ、ギリギリセーフだわ…」
さすがのセアラも青ざめてヨロヨロしながら道へ降りた。通行人が安堵した顔でよってくる。