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友の名
【ファンタジー その他小説】

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友の名-3

「で…お前のしたことで間違いないんだな?」
 応接間。
 ケインはどっかりとリグの前に腰を下ろしている。
 リグは口を開く代わりにこっくりと頷いた。
「なるほど…それでは私のチャームポイントが焼けたのもリグ様のせいだと」
 そう言ったのはケインの傍に立つセバスだ。
 普段は温厚な顔だが、よーく目を凝らすと細い眦が僅かに吊りあがっているのが判るだろう。
 それもそのはずで、彼の特徴でもあるところのカイゼルひげが、片方だけ見事に焼失していたのだ。彼がキッチンで料理していた所突然かまどがストライキを起こし、業火を吹き上げたからである。
 そのアンバランスさは剣呑な雰囲気の応接間で一抹の清涼剤足り得た。
「ぷぷっ……だ、だが、一体何のためにこんな事をしでかしたんだ」
 セバスから顔を背けて喋るケインの声がかすかに震えている。
 状況と場所がよければ本当のところ大声で笑い出したい所なのだが、現在のセバスは恐らくケインを血の海に沈めることを躊躇すまい。セバスの目が少しだけ見開き、ケインの方をみた。慌てて視線をリグへと合わせるケイン。
「……」
「言わなきゃわからんだろう、リグ」
 それでもまだ言いにくそうにしていたが、今度はセバスの鋭い眼光がリグに向けられる。
 彼女も比較的付き合いが短いとはいえ、本能で悟っていた。
『長生きしたければ奴には逆らうな』と。
「ん……実は、ね。あるアニメを見てて……」
「ふむふむ?」
 アニメか。
 そうと聞いたケインは少し安堵した。
 普段は研究室に篭りっきりで怪しいことをしているリグだが、そんな彼女もまた少女なのだな。
「なるほど。で、どんなアニメなんだ?」
「う〜ん…」
 幼い頤に手を添えて少し考え込むリグ。
「かなり昔のジャパニメーションでね〜」
「ほうほう」
 まあ、今はともかく昔のジャパニメーションには素晴らしいアニメが多かったと聞く。
 彼女も楽しめる少女向けアニメもあったのだろう。
「なんというアニメなのですかな?リボ○の騎士?ベル○ら?ガ○スの仮面ですかな?」
 …妙な所で博識なセバス。だが、リグはそのどれにも頭を横に振る。
「うぅん?では、何をみたんだ?」
「それがね〜」
 にぱっ、とリグの顔が輝いた。
「確かトレーラーとパトカーが合体して、日本のおまわりさんを名乗る巨大ロボットになって悪と戦う素敵なお話〜♪」
 盛大にケインとセバスが後ろに倒れる。
 …ま、やっぱりリグはリグだ。
 気を取り直してケインは質問を続けた。
「………で。どうしてそれが今回のと関わりがあるんだ?」
「う…」
 もごもごと言い難そうにしていたが、
「…さあ、続きを」
 セバスの言外に含む圧力にリグが気圧される。いや、リグばかりではなくケインも内心恐怖していた。
「そ、それで…そのパトカーにね、超AIってのが搭載されてるんだ〜」
「ちょう・えー・あいー?」
 期せずしてケインとセバスが一区切りずつ唱和する。
「…なんだそれは?」
 ケインの質問に、リグの頬がぷうと膨れた。
「だから超AIは超AIだよぅ。普通のAIじゃないのっ」
「いや、ですから…どこがどう普通ではないのか、爺にもわかるように教えて頂けませんかな」
 セバスもまたクエスチョンマークで頭が一杯になっている顔をしている。
「う〜ん…判り易く言うとね…」
「判り易く言うと?」
 ずびしっ、とカメラに向けてリグが指を突きつけた。
「…どこを向いてるんだリグ」
「気にしないのっ☆判り易く言うとね、感情を持ってるってことなのさ〜」
 その言葉にケインとセバスが真っ白になる。
「…あり?ど、どったの二人とも?」
 数分間真っ白になっていたが、リグが肩を揺さぶったことでようやくケインが現実に戻ってきた。
「…それが、なんの役に立つんだ?」
「ええっ、役に立つよぉ」
 得たりとばかりに胸をふんぞり返らせるリグがぴっと指を付きつける。
「感情があれば敵とかに動かされることもないし、ある程度自分で判断して行動できるから便利だよ〜」
「ふむふむ、なるほど。他には?」
「あとはね〜」
「うんうん、あとは?」
 さり気ないケインの聞き方にリグはにこやかに口を滑らす。
「色々悪戯してくれるからとっても面白いしぃ、造物主であるボクの命令にだけは従がうからケインちゃんがどこに逃げようとも…はっ」
 ようやくリグはケインの髪がざわざわと怒りのオーラに揺らめいていたのに気がついたが、すでに手遅れである。
 口は災いの元とはよく言ったものだ。
「なるほどね………ちょーーーーっとリグ、頭をこちらに出しなさい」
 応接室内に、ぼかんっという小気味の良い音が響いた。


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