「三角形△ワルツ」-5
「さぁ、これなら逃げられませんね。
俺は、買い物に行ってきます。
もちろん、女性用のカミソリを買いに、ね」
「…じょ…冗談でしょ…、なんでそこまでするのよ?
逃げないから…謝るから、ほどいてよ、これ…!」
「はっ、今更遅いです。
つーか…うるさい口ですね。
俺を待つ間、暇潰しを与えてあげようと思ったけど、まずはこっちかな…」
そう言うと、凌はまたもやネクタイを取り上げ、真ん中辺りにハンドタオルを巻き付けた。
まさか…
「やっ…やだ凌っ、やめ、んぐむぅっ…!
ん゛ーっ、んーっ!!」
「いい格好ですね、珠子さん。
下着姿で両手両足縛られて、猿ぐつわ。
イイコト教えてあげましょうか。
…俺、実はサド気質あるんですよね。
上司である珠子さんには隠してましたけど、本当はこうして苛めてみたかったんスよ、ずぅっと、ね」
…あたしは、ぶるりと震えた。
そんな風にあたしを見てたなんて、知らなかった。
いつも仔犬みたいな、あたしの部下、兼彼氏。
あたしはそれで満足してたのに…凌は、違ったの?
自分の状況はさて置き、凌に対して胸が痛む。
あたし…凌のこと、こんなに好きになってたんだ…。
それなのに。
「珠子さん、仕上げです。
これで、俺がいない間も楽しんでいてくださいね」
「…!
んっ、ん゛んーー!!」
やだ、と叫んでも無駄だった。
その無機質な玩具は、凌の手でするりとあたしの下着の中に潜り込んできた。
…ブブブブブ
中間より少し弱いくらいの振動が、あたしのクリ×リスを刺激し始める。
さすがに、最初はびくりと身体が跳ねた。
必死で抑えるけれど、これが長時間続くなんて耐えられない。
「…っん!
んぅ!」
「ははっ…何言ってるのか分かんないっスね。
写メ撮らしてもらいますね」
「んーっ…!」
…―カシャッ!
スピーカーからシャッター音が響く。
満足そうに頷く凌。
あたしにはもう、涙目で見上げるくらいしかできないけれど、全くそれは効果が無い。
そんなに凌はあたしに対して怒ってるんだな、と思うと、とうとう涙は溢れてシーツに流れ落ちていった。
…―ぎしっ
またも、あのケモノの瞳で見つめられる。
「珠子さん、めっちゃそそられてます、俺。
でも、お仕置きはしないといけないから、お楽しみはその後でしましょうね。
いっぱい可愛がってあげますから、ゆっくり妄想でもしててください」
そういうと、凌は本当に、家を出て行ってしまった。