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熱帯夜
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五日目-1

今日は定時で仕事を終わらせてそれから彼と話をして、家に着いたのは9:00過ぎ。

部屋の窓を開けたら秀君の部屋から唸り声が聞こえて、悪いとは思いつつ部屋を覗かせてもらった。

「秀君?」

名前を呼んでも返事がない。薄暗くて中の様子はよく見えないけど聞こえてくる声が苦しそうで、数分悩んだ結果、思い切って部屋に侵入した。

「秀君…」

呼んでも返事はない。呼吸が荒くてただ事じゃないと思って手を伸ばしたら、

「!?」

突然腕を捕まれて引き寄せられた。

硬直。

なんだこれ!
いやいや、待って!
あたしはこんなつもりで来たんじゃない!!

仰向けで寝ている秀君の上にあたしがのしかかっているような今の状態。背中に回された腕は定位置を探すように動き回ってピタリと止まった。

「…大好き」
「〜〜〜〜〜っ」

だだだだだいすき!?
誰が?
あたし!?
これ、告白――…

「ぐぅ」

ぐぅ?

「ぐぅ」

ぐぅ…?

さっきまで荒かった呼吸が、気持ち良さそうな等間隔のいびきに変わった。

…寝てんの?
ていうか、寝ぼけてたの?

「…ふっ」

慌てふためいた自分が恥ずかしくて、冷静に腕を外して秀君から離れた。

『大好き』
「〜〜〜っ」

寝言とは言え、耳元で囁かれた甘い言葉が頭に残って消えてくれない。無駄だと分かってるけどゴシゴシと両耳を擦った。
どんな夢見たらあんな寝ぼけ方ができるわけ?
あんな寝言が言えるわけ?
信じらんない、寝てるだけのくせに全身やたら熱くて…

熱い?
そういや腕も身体も熱かった…

いやいや、思い出してあたしが熱くなってどうする!
じゃなくて!

そろそろと秀君に近づいて、今度は抱きつかれないように頭の方にまわってそっと額に手を当てた。


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