異界の二日間 (1)-1
私はかつて脇宗と出会ったその駅の小道から自宅に向かうベッドタウンの駅を歩きながら脇宗との話を思い出していた。
瑞恵との情交の後で脇宗から「兄ちゃんも童貞を喪失したな。」と言われた事が引っかかった。
実を言うと私は高校時代に『童貞』を喪失していたのだ。それも瑞恵と同じ年の、
そして瑞恵と同じ『この世の者ではない』少女によって。
それは私が高校2年生の頃だった。私の両親は田舎に一時帰省するが、私は残る事になった。
これは私にとっても願っていも無い事だった。さらに私の兄は大学のキャンプで家を不在だった。
つまり家には私しかいない事になる。当時としては一人暮らしの気分が味わえる時期だった。
両親と兄がいない日は二日間。その間の日々は私が家で自由に出来る時間だった。
両親と兄がそれぞれ家を出ると私は窓を閉めてエアコンを全開にし、
布団の上で寝転がりながら背伸びをした。
私の自室にはベッドがないが、それがまた自由な空間を作り上げていた。
「ふあ〜あ、ようやく年に一回の自由な時間が出来たぜ!」
私は同級生から借りたアダルトビデオでも観ようとバッグからビデオを出した。
当時はインターネットもない時代、楽しみとすればそれと深夜テレビ番組を観るぐらいだったが
それでも当時は楽しかった。自室のビデオの電源をオンにした時に家のチャイムが鳴った。
(誰だろう・・・?)
私はTシャツに短パンの姿で玄関に向かった。ドアを開けると白のワンピースを着た
12歳ぐらいの少女が回覧板を持っていた。少女の肌は小麦色に焼けている。
髪はポニーテールをしており一重まぶたのどこにでもいる少女だったが顔に覚えはなかった。
(どこの家の子だろう・・・?)
おそらく家族とどこかの海にでも行ってきたのだろう。
「回覧板でーす。」
「あ、どうも。」
私はその少女から回覧板を受け取るとドアを閉めて鍵を掛け、回覧板を玄関の棚に置くと
そのまま自室でアダルトビデオをビデオデッキに入れた。
内容はごく普通のビデオだった。私はそれを観ながら肉棒を擦った。
精は直ぐに吐き出された。白濁とした精がティッシュに注がれると
私はビデオの電源を消して、トランクスを履くと浴室に向かった。
更衣室ででTシャツとトランクスを脱いで全裸になると浴室のドアを開け、そして閉めた。
熱いシャワーの蛇口をひねってその湯を自分の体に浴びせた。
「ふう・・・。」
熱いシャワーを浴びて体を洗い終わるとそのまま更衣室でトランクスを履いた。上には何も来ていない半裸の姿だった。
あとはダラダラと漫画を読みながら録画したお笑い番組でも観ようと思った。
そして自室まで歩いてドアを開けるとそこにはいるはずもない、何者かが立っていた。
「わあ!」
私は驚いて腰を抜かしそうになった。そこにいたのはワンピースを着た少女が立っていた。
よく見るとその少女はさっき回覧板を持ってきた少女だった。
「だ、ダメじゃないか!勝手に人の家に入ってきて!」
私は相手が小学生ぐらいの少女ながらもつい怒鳴ってしまった。
しかし少女は私の怒号にも関わらず顔に笑みを浮かべながら答えた。
「だってお兄ちゃんの家のドアに鍵がかかっていなかったんだもん。」
その落ち着いて答える姿にさらに私の怒りが爆発してしまった。
家の鍵なら掛けたはずだからだ。