夏の夜-後編--6
「そうそう、日曜だし、のんびりしたってウチはいいけど、やっぱりあなた達は早く帰ったほうがいいと思うし」
やわらかな雰囲気の二人。
アイコンタクト?
二人、目を合わせて微笑む。
おっとりとした彼氏さん。
すごく、お似合い。
「ねえちゃん、棚のタオル使っ…た…」
洗面所から出てきた先輩が固まる。
おねーさんの彼氏さんとの初対面。
「あ…おはようございます。おじゃましてます」
トーンダウンでご挨拶。
「おはようございます」
「ぷ。へんなコねえ」
「き、キンチョーしてんだよ、一応…」
先輩は口を尖らせて小声でいった。
「僕も緊張してます」
彼氏さんが吹き出すように笑う。
「坂井圭です。見ての通り、一緒に住んでます」
「北野遥です」
うわ、先輩がっちがち。
いつもなにかトラブルがあっても飄々としてるのに。
一方彼氏さんは、悪ぶることなくにこやか。
「も、いいからハル、こっちにおいで。そっちで智美ちゃん、着替えるから」
「う、ん…」
おねーさんが先輩に手招きしたので、私は入れ替わりで洗面所に入っていった。
……大丈夫かな?先輩。
着替えて出てみれば、先輩と彼氏さん、ふつーに話してて。
なーんだ、つまらない。
イスに座った先輩が手招きしてる。
イスは2脚しかなく、彼氏さんは流しの横の踏み台的なものに腰を下ろしてマグを持っていた。
「焼けたのから食べてね。智美ちゃんは何枚食べる?」
「あ、一枚あれば十分です。…すごく、久々にちゃんとした朝ごはんです」
「そう?欲しくなったら言ってね、焼くから」
トーストが2枚。トースターの中。
サラダと目玉焼き。コーヒーと牛乳。苺ジャムとバターとはちみつ。6Pチーズ。
大急ぎでパンをかじって家を飛び出す私にしてみれば、すごくごちそう。
「じゃ、いただきー。……ほれ」
先輩は先に焼けたトーストを取ると、もう一枚載った皿を私に差し出した。
「え。いいのかな」
「いいんだよ。俺たちが食わないとホスト、食えないの」
「そゆこと」
おねーさんがコッチを見て笑った。
マグをもっていて何か飲んでるみたい。もうイスないから立ったまま。