二人の満員電車-8
「あ、ありがとう」
安藤の方に向き直り、そう言った友里だが・・・。
安藤はまだ友里に覆いかぶさるような体制から動かない。
「あ、安藤くん・・・?」
「・・・また、襲われちゃいけないから・・・着くまで、こうしててやるよ」
え・・・っ。
この、体制のままで・・・?
・・・友里はまともに安藤の顔を見ることが出来ずに、コクンと頷いた。
安藤とは、クラスメイトとして話はしたことはあったが、
それ以上の会話をしたことはない。
校外で会ったのも今日が初めてだ。
・・・友里は安藤に対して憧れの感情を抱いていた。
スポーツ万能で、目立つ存在の安藤。
平凡で目立たない友里。
付き合うとか、そんなことは考えたこともなく、
ただ密かに憧れを抱いているだけだったのだが・・・。
その、安藤の胸と目の前で密着している。
汗の匂いと、ほんのりコロンの香り。