ラインハット編 その六 別れ-11
「ええ」
「でも、貴方だってそうじゃないの?」
「僕は少し前に済ませたからね」
「そう? ああ、そうだったわね……。で? サラボナに行った後はどうするの? もし、お使いが終って、気が変わってヘンリーの部下になりたいなら……」
「やめてください。僕は彼の友達です。部下にはなれませんし……、それによく考えたらもう子分になってるんですよ」
「子分ねえ……。まったく変なところで子供なのよ。貴方もヘンリーも……」
わからないとばかりに小石をつまんで海へ投げるエマ。
「でも、不思議よね……。どうしてマリアはヘンリーを選ばなかったのかしら……」
エマの危惧はまったくの取り越し苦労だったわけだが、何か不満気味。
「きっと……」
「きっと?」
リョカの言葉にエマは振り返る。なぞなぞの答えを知りたがる子供のような視線に、リョカはやはり愛想笑いで頭を掻く。
「いえ、やっぱりわかりません」
「もう、思わせぶりなんだから……」
期待しただけ損したと、再び小石を投げるエマ。今度は水面を二度ほど跳ねる。
「子供か……。でも、ヘンリーもアルベルトなんて名前名乗るぐらいだからね……」
「ねえ、あのアルベルトってなんなの? 私だけ知らないのよね。失礼しちゃうわ」
「ああ、アルベルトっていうのは……」
リョカはかつてサンタローズの借家で読んだ話を思い出す。
――巡る世界のアルベルト。
ビアンカが読めない単語ばかりでつまり、すぐに飽きた本のタイトルだった……。
続く