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熱帯夜
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三日目-6

「分かった」
『ごめんな、みのり』
「仕方ないよ、仕事だもん」
『ありがとう』
「一緒に花火見たかったな」
『俺も』

“俺も”
良かった。
気持ちは同じだ。

『みのりと一緒に見たいから、一人で見に行ったりするなよ』
「…あ、うん」
『夜メールするから、家にいるんだぞ?』
「うん、分かった」


分かったと言ったものの、電話を切った後は暫く動けなかった。
電話で言ってくれた内容は嬉しかったよ?嬉しかったけど、会えないショックはそんなもんじゃカバーできない…

「みのりさん?」
「…っ」

忘れてた。
秀君がいたんだった。
とても顔を上げられる状態じゃない。でも、傷ついてると思われたくない。

「着替えるから、窓閉めるね」

下を見たまま、でもできるだけ明るいトーンでそう告げた。

「えっ、何で?」
「中止になっちゃったから」
「じゃあ俺と行こうよ」
「駄目」
「何で」
「彼に、家にいろって言われたから」
「何だそれ」
「仕事終わったらメールくれるって」
「意味が分からん」
「約束は守らなきゃ」
「向こうは守らないのに?」
「…仕事だもん。しょうがないでしょ?」
「でも、」
「学生には分かんないよ」

そう、この子にあたしの気持ちなんか分かるわけない。
駄々をこねていい年じゃない。もう大人なんだから――…

「やっぱ俺と一緒に行こう」
「……………は?」
「行こう、お祭り」
「あたしの話聞いてた?」
「俺には関係ないもん」
「関係ないって…」

あたしの言葉なんか完全に無視して、さっさと出かける準備をしてる。

「角のコンビニで待ってるから」
「あたし行かないよ!」
「10分たっても来なかったら迎えに来るね」
「えっ」
「じゃ、後で」
「ちょっと!」

そしてあたしに何も言わせず窓とカーテンが閉められた。


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