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熱帯夜
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三日目-7

「…脅し…?」

迎えに来る?
嘘でしょ。
だってうちに来たりしたらお母さんに見られちゃうでしょ?そしたら秀君や下手したらおばさんの立場も悪く――…

『俺には関係ないもん』

ついさっき秀君が言ったセリフを思い出した。
あの子ならそう言い兼ねない。あたしの立場もおばさんの立場も考えずに意気揚々と現れそうだ。

それは困る!!!!

浴衣とセットで用意していた巾着を掴んで階段を駆け降りた。

「行ってきます!」

慣れない下駄のせいで走れない。でも走らなきゃ、10分たっちゃう。
コンビニまであと少し。
息を切らして前に進むと、向こうから秀君が歩いて来るのが見えた。
あたしを見つけて、笑顔で駆け寄って来る。

「今迎えに行くとこだった」

やっぱり…

「走ってきて良かった」
「そんなに俺に会いたかった?」
「家に来られたら困るの!」

誤解されたくないからはっきり言い返した。
そんなアラサーの必死な姿は

「ふっ」

若者に鼻で笑われる結果になる。

「何がおかし――…」
「なぁに本気になっちゃってんですか」
「え」
「俺が本当に迎えに行くと思う?」
「へ…」

え?
てことは?
もしかしてさっきの脅しは…

「…嘘?」

その問いの答えは、ニヤニヤ笑う秀君の顔を見れば分かる。

「最悪」
「まぁまぁ」
「何でそんな嘘―」
「何でって、そんなの決まってんじゃん」

秀君は、それが当たり前の事のように

「みのりさんと一緒に花火を見たかったからでしょ」

照れる様子もなくシレッと言ってのけた。そんなセリフにあたしの耳が真っ赤になってるのは鏡を見なくても分かる。
おばさんにも言ってるのかな。だからこんなに自然に言えるんだよな。


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