夏の夜-前編--5
「あー、うまかった。ねえちゃん、こんな技どこで覚えたんだよ」
「んー、ないしょ」
インスタントラーメンのアレンジ、結構気に入ったようだった。
実はこれは圭さんに教えてもらったものだったりする。
1つはカップ麺にお湯をいれて麺がほくれたところで麺だけ出して野菜とベーコンを追加して炒めたもの。
1つはカップ麺に牛乳を入れたて作ったもの。これに焼いたベーコンと粉チーズをのせる。
私も最初はどうかと思ったけど、圭さんが作ってくれて、そしたら美味しそうな匂いで。
食べる頃には全然抵抗なかった。
二人にも好評で、うれしかった。
「このクッキーも、美味しいですね」
「もらいものなの」
にっこりと笑って、彼女の緊張も少しは解けたらしい。
湯気のたつカップを抱えるようにして紅茶を飲む。
「ところで、さ。今更なんだけど……。ねえちゃん、男は?今日帰ってこないの?俺ら、いてよかった?」
上目遣いで様子を窺うようにハルが尋ねてきた。
「は?」
「だから。男、いるんだろ?」
心臓がバクバクする。
「そりゃあ、かっ、彼氏ぐらいいるわよ、なに?」
圭さんはタバコすわないから匂いってことはないと思うし。
服とかはしまってあるし。
なにか不審なものだしてたっけ?
歯ブラシ?
あ。サンダル。
犬のシロの散歩とかコンビニにうろつくときのが。
「さ、サンダルは…おいてあるのよ。前に海に行ったときのが、そのまま、で…」
「違うよ」
ハルが立ち上がって洗面所に向かった。
私はあわててついていった。
と、いうか、我先にという感じで、なにか見つけようものならひったくらねば。
「コレ」
ハルの指先。
私の整髪料(圭さんは仕事先でしか使わないからここにはない)の奥にひげ剃りが。
「あいた…」
「こんなもん、男が住んでなきゃ置かないだろ」
「う……」
私はハルに背中を向けてとぼとぼとリビングに戻った。
ハルも私について戻る。
「で、俺ら、いていいの?」
「いいわよ。どうせ仕事だもん。帰ってくるのは4時ぐらいになるし」
もういいや、バレちゃったし。
「よかった」
ハルが胸に手を当ててほっと息をつく。