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やさぐれ娘は屋上で笑う
【学園物 恋愛小説】

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#03  研修旅行――二日目-5

「岐島!オイ、この――」

「なんだい?まさか、きみの声がこの距離で届かないと愚考を犯しているわけじゃないんだろう?だったら、そんな喜劇の三枚目のようにギャアギャアと喚かないでくれると助かるんだけれどね」

「てめェっ!」



顔も上げずに、嘲る調子を全開に山崎へと話しかける岐島。

さっきの話しだと、こいつもこいつで睡眠時間を削られたようだったし、案外、機嫌が悪いのかもしれない。

……昨日も、朝食をコンビニの惣菜パンで済ませていたし、きっと朝に強い人種じゃないんだ。こっち側の人間なのである。

そんな奇人とのちっちゃな共通項を見つけられた私に反し、どうやら、山崎は岐島の言葉に極めて不快感を覚えたようだ。

岐島の手から新聞を叩き落とした。

バサリ、と新聞が茜色のカーペットの上に広がる。



「………………ふぅ」



岐島が、落ちた新聞に視線を送り、次に気色ばむ山崎へと移していった。

はっきり言おう。この男の戦闘能力の高さを知ってる私としては、めちゃくちゃおっかない。正直、鳥肌が立った。

だって、こいつ、顔色ひとつ変えずに格闘技経験者をノせるんだぞ?

山崎は中肉中背――どう見ても、岐島に対抗できる能力を保持しているとは思えない。

それでも(そんなおのれの暴挙を露ほども知らず)、山崎は気丈にも岐島を睨んでいた。

とても、飲酒を反省しているとは思えない。……まあ、ビルマに叱られて改心するようなヤツがいるんだったらお目にかかりたいが。

岐島が、腰を上げると新聞を綺麗にふたつに折り、テーブルに載せると背筋を伸ばし、山崎へと向かい合った。



「きみの、極めて理にかなわず礼儀正しくない行動を見たところ、先生方から停学を言い渡されたようだね。おそらく、この旅行も、きみらにとっては残り一時間ほど――朝食を終えたら、比留間先生あたりに引率されて学校の強制送還されるんだろう。そして、もしかしたら、きみが心底、今回の研修旅行を楽しみにしていたとか、鎌倉という土地に特別な思い入れがあったとか、そんなバックグラウンドがあるのかもしれない。だとしても、俺に八つ当たりをするのは、一般的、社会的な感性とモラルに照らせ合わせるといかがなものかという結論に達するんだけれども、きみはどう思う?」

「は、はあ?」

「なんだい?これでも、きみのような、どのような面から検証しても、よほどの愚か者なのでは?と疑われる人間相手にでも理解できるように説明したつもりだったんだけれども、程度をもっと下げたほうがいいのかい?なら、そうしようか――。……ケンカを売るつもりなら、買うよ?俺もきみたちには思うところがある」


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