#03 研修旅行――二日目-20
「ホラ、私って生徒会じゃないですか。ですから、会長と佐倉さんの問答を何度か見たことがあったんですよ。それで、」
「はっ――。姉妹の口喧嘩で評価されてもな」
「でも、クラスでも、やっぱり、少し他の人と距離を取っていますし」
「……ふん」
それは、私が距離を取っているんじゃなくて、他の連中が距離を取っているだけだ。
――ってか、口にすると虚しくなりそうな予感が満天だったので、言いはしないが。
「でも、岐島くんと一緒にいる佐倉さんは、凄い自然ですよね?」
「あっ?っざけんなよ!それはナニか?なんか、そういう、あの――ああっ、面倒くせっ。恋人同士ってことか?だったら、おまえ、見当外れも大概にしろよ!」
「ほら?いまの、ですよ」
「ぁ……。ぐぅ……」
私は林田を睨み、ついでに岐島を睨んだ。
先ほどまでと微塵も変わらない表情で見つめ返してくる岐島。
――いや、無反応は無反応で、なんか腹立つな。少しは同様なりなんなりはしろよ!
そんなことを思いつつ、眼差しをさらに剣呑にさせた私を端に、林田が続ける。
「岐島くんも岐島くんで、一線引いていますしね?」
「それは俺が引いているんじゃなくて、回りが引いているんだよ」
「っ――」
私が言わなかったを、隣のノッポは平気で口にしやがる。虚しくないのか、おまえは?
そう私がいぶかしんでいると「フゥ」と岐島が嘆息した。
「あまり自慢できることではないか」
「そんな、ことは……」
「まあ、別に俺も親しくしようと努めているわけでもないしね。それよりも、相原さんはどうしたんだ?」
「えっ?ああ、柚子なら、なんかヨットとかサーフィンとかを眺めるのに夢中みたいで。あの子、あれで結構、アウトドア派ですし」
「ふぅん」
「………………」
小さく鼻を鳴らした岐島を、チラリと林田が見上げた。
そんな格好を無言で十秒、意を決したように口を開いた。