#03 研修旅行――二日目-10
「受け止めんな!痛いだろうが!」
「受け止めるよ。痛いからね。なにをするんだ?その歳で更年期障害か?イライラしているんだったら、病院に行くんだ。薬をくれるか、または、格子付きの病院に入院させてもらえる」
「おまえ、ホント、ド失礼だな!つーか、バカなの?バカなのかッ?」
「前にも言っただろう?もし、俺がバカなら、きみは今生で堕落した日々を送ることさえも罪な――」
「前よりも、大分、ヒドくなってんだろ!あれ?もしかして、岐島、私のことが嫌いだったりするっ?」
「大丈夫、好きだよ」
「えっ――」
私は、岐島の思いもよらぬ返答に固まった。
岐島が能面顔に、小さな小さな微笑を浮かべて続けてくる。
「ああ、好きだよ。……少なくとも染色体がXYなヒトよりかは劣情をを感じるくらいにはね」
「嬉しくねェよっ?地球上の半数にくくられた告白は!」
私は、岐島の想定内の返答に――右裏拳を放った。
すると、珍しいことに回避行動も防御反応も示せなかった岐島。
――いや、ちょっと、私に責任が皆無なような表現だった。うん、その、な?……私の拳が岐島の鳩尾にジャストミート。
だって、避けると思ったんだもん♪
……運が悪いことに、丁度、誰かが呼びに言ったのか、騒ぎを聞きつけて自主的に来たのかは知らないが、先公ふたりが登場した。
佇む山崎、気まずいような表情を浮かべる山崎の仲間――、
そして、腹を押さえて悶絶する岐島と裏拳を放った格好でフリーズする私こと佐倉萌。
――この状況で、一番ワルそうなのは、だ〜れだ?
…………当然、私になった。
「――あのな?岐島?私に、あるだろ?なんか?こう、一言?巻き込んですいません、とか、庇ってあげられないでごめんね、とかよォ……」
「なんだい?最近、無為に他人に謝罪をさせるのが流行っているのか?」
「流行っていねェし、そもそも、無為じゃねえよッ?林田や相原がいたからよかったけど、最悪、私まで強制送還だったぞクラ!」