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フェイスマン
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フェイスマン-1

楽しさ、って何だろう。
みんなどうしていつも笑ってるんだろう。
学校なんてつまんない。行きたい訳じゃないけど、退学になるのは嫌だから仕方なく行ってる。
それに、我慢しきれないくらいのつまらなさじゃないから、慣れちゃえば苦痛じゃなかった。
放課後になると多少は楽しくなるけど、明日のことを考えると憂鬱になってしまう。
この楽しさも限られた時間でしかない、と思うと、心から楽しめなかった。

「どしたの環、なんかあったの?」
「えっ?い、いや、別に」
「変だよ、ぼーっとしちゃって。具合悪いの」
「い、いや、ちょっと考え事。大した事じゃないから」

加奈は不思議そうにこっちを見てたけど、すぐに隣の愛佳と話し始める。
大した話題でも無いのに2人とも笑いながら話を弾ませていた。
今日学校に来る途中でこけたサラリーマンを見た、ペンキが剥がれて字が中抜けしてる看板があった・・・
何で、たかがそんな事で笑えるの。私には良く分からない。


「あ、コンビニ寄ってかない?お菓子買おうよ」


別に寄りたい訳じゃなかったけど、外で待つのも嫌だったから付き合う事にした。
入った瞬間、ひんやりした風がまとわり付いてた蒸し暑い空気を払い除ける。

「いらっしゃいませ!!」

その風とほぼ同時に大きな声が響いた。
短く切り揃った針金みたいな髪、見開いた瞳に、大袈裟なくらい吊り上がった唇。
コンビニでは今までもう少し控え目な挨拶しかされた事が無かったので、大きな声に驚いてしまった。

「びっくりしたぁ・・・何、あの人」
「こっち見てる。目合わさない様にしよ」

加奈と愛佳は驚いてぶつぶつ言いながら、お菓子の棚を探している。

「・・・失礼、あなた取り憑かれてますね」
「えっ?!」

振り向くと、その店員がいた。

「ちょっと、何なのあんた。気持ち悪いんだけど」
「そうだよ、声でかいし。用が無いのに話し掛けないで」
「今すぐ退治しなければあなたは大変な事になる。さあ、僕に任せて!」

気持ち悪くなったので、私達はそのコンビニから逃げ出した。
取り憑かれただの何だのって、変なものでも買わせるつもりだったの・・・?

「何なのあいつ。もうあそこ行かない様にしよ」

この日、私は初めて頷いた。


−数日後、私はさぼっていた。

授業に出るのがだるくて屋上で寝転がっていた。
こうして雲を見ていると、空に浮かんで漂っているそれが羨ましくなってくる。
私もこのまま、寝ていれば・・・雲になれるかな。浮いてみたらどんな気分だろう。

心が無くなれば、こんな虚しさを抱えなくていいはずだ。



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