二日目-9
「奥さん、いつ帰ってくるの?」
「明日の夜だって」
「良かったね」
良くねぇよ!
「でも、」
「分かってますよ」
「へ」
「人の家庭は壊すな、でしょ?」
「うん」
「大丈夫です」
壊れようがないのでどうぞご心配なく。
でも、じゃあもうこんな風に一緒にいられないんだ。
今日だけ…
「お姉さん、名前は?」
できるだけ軽く聞いてみた。
「みのり」
「みのりさん?」
「うん。あ、あたしも質問」
「はい」
「今いくつ?」
「えっ」
年?
「い、いくつに見えます?」
「ん〜、かなり若く見えるんだよね。下手すりゃ十代くらい…」
ビンゴじゃん!
やっぱ素直に言うしかないか。現在17歳の高二ですって…
「まぁ実際十代だったらドン引きだけどね」
「…っ」
「でも有り得ないよね、十代の愛人なんて。ていうか、十代なんて未知の生物だし!で、今何歳?」
「……………に、にじゅういち…、です」
「21歳?若っ」
多めにサバ読んだのにそれすら若いと驚かれてしまった。
「大学生?」
「えぇ、まぁ…」
「夏休みなんだ」
「はい」
「家に帰らなくて大丈夫なの?」
「あ、あの、ひ、一人暮らしだから…」
「へー、いいな」
最悪だ。
こーゆうのを嘘の上塗りって言うんだ。重ね塗りし過ぎて真実が見えなくなってる。
俺が21?
大学生?
一人暮らし?
どこがだよ!
つうか、何で簡単に信じちゃうんだよ!
絶対この人危ない。確実にろくでもない男に騙される!
しょうもない嘘つかれて同情して損する――…
「…」
それ、俺のことだな。
しょうもない嘘ついて騙してるの、俺じゃん。
「…ぇ、ねえ!」
「あ、はい!」
「電話鳴ってるよ」
お姉さんの言う通り、テーブルの上で携帯が必死に自己主張してる。