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熱帯夜
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二日目-10

「すいません、ちょっと…」

発信主は弟。
珍しいな。

「もしもし?」
『あ、兄ちゃん!』
「何」
『ばあちゃんが救急車で運ばれた』
「は!?」
『階段から落ちて腰打って、今検査終わったとこ』
「検査?それ大丈夫なのか!?」
『とりあえず大丈夫なんだけど安静にしなきゃいけないみたいで、母さんがばあちゃんの世話であと一週間は帰れないって』
「…一週間――」

心臓がドクドクうるさいのは、ばあちゃんの容態を心配するせいではなかった。

『そっち帰っても家事やる人間いないだろ?俺も残るから、兄ちゃんは留守番頼むだって』
「分かった。…そっちは任せるから」

電話を切って、しばらくそのままでいた。

ばあちゃんが怪我。
俺は一週間一人暮らし…

ばあちゃん、ごめん。
俺今この状況すごい喜んじゃってる。
ばあちゃんの事よりみのりさんと一緒にいられる可能性が一週間延びた方が嬉しいかもしれない。

本当の事を話そうかなんて、ついさっき考えていたことなのに。今は、この嘘をつき通したいと考えてる。

美味しそうにビールを飲むみのりさんを見て、身体の真ん中辺りがギュッと締め付けられた。

俺は嘘つき。
みのりさんを騙してる。
でもあと一週間だけ。
一週間だけだから、それまでこの嘘をつき通すんだ――…


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