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熱帯夜
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二日目-5

『お母さん、明日の夜には帰るから』

早いな。
もっとゆっくりしてくりゃいいのに。

『返事は?』
「はいはい、待ってますよ」
『あんたってほんと薄っぺらいわね』

やかましいわ!
実際感情たっぷりで待ってるなんて言われたら気色悪がるだろうが。

『とにかく、ちゃんとやる事やってよ。戸締まり確認も忘れないで』
「はーい」

口うるささにうんざりして話半分で電話を切った。

ご飯?
いらねぇよ。
宿題?
知らんわ。
もー、なーんもやる気が起きん。
早々と戸締まりを済ませシャワーを浴びて真っ暗で蒸し暑い自分の部屋に入ると、そのままベッドに倒れ込んだ。
コチコチと規則正しく動き続ける秒針の音をもう何千回も聞いてる。気がつけば外は真っ暗。

俺、今日一日何してたんだろ…

チラッと隣の家の窓に目をやると、そこはうちと同じく真っ暗な状態。
お姉さん、ご飯中かな。風呂かな。
…デートかな。

「知らんっつーの」

さっき散々人のもんだとか喚いてたくせに、頭のどこかで諦めきれてない自分がいる。
今だって、カーテンも閉めずに隣の窓ちらちら見ちゃってさ。完全に犯罪だけど。

これは、気になる通り越して惚れちゃった?

いやいや、んなバカな。
いくら年上好きな俺でも、昨日今日知り合った人を好きになったりしないって。
これは多分、いきなり降って湧いたタイプの人を簡単に手放したくないだけだ。
だからこんな――…

「っ!!」

突然お姉さんの部屋にパッと明かりがついて、心臓が止まりそうになった。
真っ暗なこちらからは明るい部屋にいるお姉さんは丸見えで、さすがにいけない事をしてる気がしてカーテンを閉めようとして、

「…」

お姉さんが泣いてる…

さっき抜け落ちたドキドキ感が倍の大きさになって戻ってきた。
どうしよう。
こーゆう場合、俺は何をしたらいい?

ドキドキとうるさい胸元をギュッと掴んだ。

全く偶然を装って電気をつけちゃうか。今丁度部屋に来たとこで、たまたまお姉さんが目に入って―、なんて軽く言ってみる?
それとも泣いてる女性をほっとくなんて俺にはできないから、とか言ってカッコつけてみようか。
何かないか、上手い言い訳、上手い嘘…


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