投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

熱帯夜
【その他 恋愛小説】

熱帯夜の最初へ 熱帯夜 14 熱帯夜 16 熱帯夜の最後へ

二日目-6

「…ダメだろ」

これ以上嘘はダメだって。ダメだけど…

普段の俺はテキトーで、めんどくさがりで。女の子に対してもやっぱりそんな感じで、泣いてる女の子に声をかけるようなめんどくさい真似は絶対にしない。
昨日お姉さんに声をかけたのだって暇つぶしの遊び感覚。
それなのに、たった数分話しただけの人相手にこんなに苦しくなるとは思わなかった。


あの人は俺のことを知らない。
俺も、こんな俺は知らない。
いつもと違う自分――


起き上がって部屋の明かりをつけた。
突然明るくなったこっちにお姉さんはすぐに気付いて、慌てて目をこすってこっちを見る。

「…」

デートだったんだよな、多分。
制服と眼鏡は消えて、化粧だって違う。
せっかく可愛い服着てるのに、何でそんな顔してるの?
泣きたかったのならごめんなさい。
でも俺、ほっときたくない。

数秒目が合った後、お姉さんはベッドに上がって四つん這いに進んで窓を開け、俺にも窓を開けるように促す。
昨日の夜中と同じ、お互い窓から顔を出した。
違うのは、お姉さんの顔がちょっと怖いとこ。

「お酒好き?」
「へ」
「飲むよ」
「へ!?」

窓越しに缶ビールを強引に手渡された。

「俺飲めないっすよ」
「はぁ?何で」
「そりゃだって未成…」
「みせ?」
「いや、みせ―…ていうか、その」
「店じゃなきゃ飲めないわけ?」
「あ、そう!それ」
「贅沢言ってんじゃないわよ、店でこんだけ飲むといくらかかると思ってんの?」
「さぁ…」
「さぁ!?あんたお会計したことないの?奢られっぱなし?」
「いや、あの…」
「あー、もう暑いし!」

昼間とはまるで違う。
荒れてるし、口が悪いし、それに…

「何よ」
「…いえ」

目が、赤いよ。

「飲まないならいいよ、一人で飲むから」
「えっ」
「じゃあね」

帰っちゃう…
どうしよう、引き止めなきゃ。じゃないともう――…

「うちで飲みませんか!?」
「え?」
「エアコンつけて快適空間で飲みましょう!」
「でもそれは…」
「ほら、早く」

勢いに任せて誘い、窓から手を伸ばした。
よく考えたらきちんと玄関から入ってもらえば良かったけど、今はそんな悠長に構えていられないんだ。
この人と仲良くなりたい。
彼氏がいたとしてもだ。
だからこのチャンスは絶対に逃しちゃいけない。


熱帯夜の最初へ 熱帯夜 14 熱帯夜 16 熱帯夜の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前