Twilight Closse U〜like a cat〜-1
Twilight Closse U〜like a cat〜
にしても、冷蔵庫に何もないのは驚いた。
いや、まぁクラスメイトがマンションの一室で空腹ダウンしてる事で既に面食らってる訳だが…
ともかく、飢え死にさせるのも忍びない。つうか、そんな事できるかって話だ。
んな訳で、俺は買ってきた材料でお粥を作る事にした。
すまん、鈴。すまん、親父。これも人助けだ。
幸い、台所は使った形跡はなく、まだ綺麗だった。米も少量ながら、一食分残ってる。奥山は死なずに済みそうだ。
よし。ここまではなかなかの出来だぞ俺。
後はグツグツ煮込んで出来上がりを待つのみだ。
「づがれだ〜…久しぶりだな。お粥なんて」
母さんが肺炎で死んで以来、家族内じゃ健康管理はもはや飛行機の機長より厳しい。
いや、マジで。
ここ最近、家族内での風邪やインフルエンザは一切無い。病人用の食べ物なんて、作った覚えがないな。
母さんはきっと、病気の怖さを身をもって俺達に伝えたんだ。
…俺の思い込みだが…
にしても、コイツは一人暮らしなんだろうか?この惨状からはとても親がいるとは思えない。
ふと、母さんが死んで暫くした後を思い出した。
ここまで汚くはなかったが、カップ麺が主食で冷蔵庫は空。まさに、今みたいな感じ。
「母さん…」
柄にもない。ずいぶん昔の事じゃないか。なのに、
「………」
カーテンで仕切られた窓。隙間から入ってきた光が、曲がった様に見えた。
と、そうこうする内にお粥が完成。
飯が無い代わり(かどうかは分からんが)食器は高価そうな物ばっかりだ。
何て読むんだ?…えと…へーメス?
とりあえずそれらの中から一番安そうなのを取り、念のため洗う。
エプロンを着けたまま、鍋とスプーン、食器、布巾を持って、長髪の少女のそばに座った。
「おい、奥山。粥作ったぞ。起きろ。死ぬな」
鍋からアツアツのお粥を食器に装い、冷ましてやった。
ゆっくりと奥山の体が持ち上がり、目を開く。
俺はその少女の目の前に、食器とスプーンを差し出した。
瞬間だった奥山は食器を奪い、中のお粥をスプーンんで掻き込み、再び俺に突っ返した。
…その反応は予想しなかったぞ。奥山。
普通だったら警戒するかありがとうと言って食べるかだろう?
まぁ、百歩譲って空腹がそうさせたとしてもだ。何の断りも無しに見ず知らずの人間からおかわりをねだるか、普通。
「…まだ熱いから。ゆっくり食えよ」
俺はさっきと同じ動作で、鍋の中身を少女に与えた。
警告したにも関わらず、奥山は流し込み様に食べた。
慌てて食うのは体に良くない事を、コイツは知らない様だ。
「ゴフッ!ゲフッ!ゴホッゴホッ…」
2、3回掻き込むと咳き込みやがった。
馬鹿だ。こいつ人の話聞いてねぇ。
「この馬鹿!熱いっつっただろ!」
急いで鞄から水筒を出してお茶をついだ。
餓死寸前の次は窒息死寸前か。大忙しだなお前は。
お茶を渡し、目を白黒させてる奥山の背中を叩いてやった。
「グビッグビッ………ハァー」
一度の失敗をモノともせず、再びお粥を掻き込む。少なくとも、猫舌じゃ無さそうだ。
「………ン」
二杯目もすぐになくなり、再度、奥山は食器を俺に突き出した。