Twilight Closse U〜like a cat〜-2
「まだまだあるから、そんなに慌てんな」
食器を受け取り、装い、また返した時、奥山の腕が目に入った。
細い。もう、骨と皮だけ。脂肪どころか、筋肉すらない様だ。
腰も細い。顔もやつれてる。とにかく、ほっそい。即身仏にでもなる気だろうか?
血色の悪さも、コイツの不健康さを物語っている。半目には光が無い様に見える。
腹が減った俺は別の皿を出して、鍋からお粥を装った。
うん。上出来。
「美味いか?」
奥山は何も言わずに、必死にお粥と格闘している。無視かいな…
鈴の言う「ネコに餌をあげる感じ」とは、こんなカンジなんだろうな。
空になった鍋を洗い、元の場所に戻した俺は、奥山の表情を伺った。
無表情な顔から、少しだけ満足感を感じた気がした。
にしても、7皿も平らげてしまうとは思わなかった。空腹とは、か弱い少女を食の鬼神へと変えてしまうのか…良い勉強になった。
「おい」
落ち着いた奥山に、俺は再度聞いてみた。
奥山は首だけでこっちを向いた。今度は聞いてるみたいだ。
「旨かったか?」
奥山はそのまま縦に首を振り、肯定の意を示した。
「そうか。良かった」
ネコの様な奴だ。餌をくれた相手に、完全に距離を許してしまっている。
自分で言うのも何だが、いきなり無償で飯を作ってくれる奴なんて、信用して良いのか?
おっと…。そろそろ家の方の食いしん坊共が腹を空かせて待っている頃だ。早く帰らねば。
「じゃ、俺は帰るぞ。学校、たまにで良いから来いよ」
俺はサクサクとカップ麺の殻を踏み、玄関へ歩いていった。
奥山は俺がドアを閉めるまで、じっと俺の方を見ていた。