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「桜館の女」
【サスペンス 推理小説】

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「桜館の女」-1

プロローグ

あの日、
家出したわたしはファミレスで夜明けを待っていた。
悩みぬいて疲れ果て、
自分が嫌いで食事もしたくなかった。
ファミレスのやけに明るいテーブルに
レモンティーが1ぱい。
覗き込むとやつれた顔が映った。
斜め前の席に偶然座っていた人、
「どうしたの、お嬢さん」
わたしの中の絶望を見出して声をかけてくれた。
「もう大丈夫だよ。わたしに任せて」と
何も聞かないでわたしの肩を抱いた。
それがイノさんだった。
信頼を寄せることのできるうんと年上の人だった。


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