「桜館の女」-5
エピローグ
母はわたしを思い通りに育てた。
大人になっても母の支配から逃れられなかったわたしは
顔色を伺うことの達人になっていた。
学校でも職場でも
誰かの顔色を伺いお気に召すように振舞うのだった。
そんな自分が嫌になり、あの日家出をした。
イノさんがわたしを自由にしてくれた。
感謝と憧れと愛しい気持ちを
イノさんに向けたのに。
裏切りに耐えられなかった。
今はイノさんの匂いにするこの屋敷で
使い切れないほどのお金と
何もかも知っている白猫と暮らしています。