続・幻蝶(その2)-3
手首と足首に嵌められた革枷が、皮膚に食い込み、鋭い痛みを与えていた。
少しずつ意識がはっきりしていく中で、私は、自分が全裸に剥がされ、体の自由が効かない恥辱
に充ちた姿に気がつく。
革枷を嵌められた私の手首は、仄かな灯りの照らされた天井から垂れ下がった鎖に繋がれていた。
伸びさった脚は大きく下肢を割り、裂くように開かされ、足元の石畳に固定された錆びた鉄輪に
革枷で括られていた。
からだを捩るごとに、鎖が鈍い音とともに軋み、手首を束ねられたしなやかな腕が、私の頭上に
伸びきる。腕の筋肉が張りつめ、太腿の内側の肌が裂けるくらい体が強く拘束されていた。
意識がはっきりとしてきた私の目の前には、黒い服で包まれたヤスオと白いサリーに包まれたヴ
ィディアが立っていた。
「…どっ…どうして…」と、私は喘ぎながら目の前のヤスオに苦しげに吐く。
ヤスオは私の頬を撫で、乳房に冷ややかな手を添えながら乳首の先端をなぞった。
「…僕か欲しかった最後の蝶ってわかりますか…その蝶は、亜沙子さんですよ…そして、今夜、
あなたは、あのガラスケースの標本箱に入ることになる…永遠に僕の蝶となってね…」
私の乳房の谷間をヤスオの指が這い始める…。腹部から腰のまわりを這いながら、淡い灯りに晒
された靡いた草むらの渦を掻き分けながら、陰部の窪みを探っている。ヤスオの指がそこに触れ
たとき、私の唇からかすかな嗚咽が洩れた。
「…きれいだ…ほんとうに美しい…」
ヤスオは腰を低くすると私の陰部を覗き込んでいる。その謎めいた視線に、私は秘部の薄皮を
一枚ずつ剥がされるような淫靡な欲情に充たされ、性器の奥の襞の起状に、かすかな微熱さえ
感じていた。
ヤスオはゆっくりと立ち上がり、椅子に腰を降ろすと葉巻を咥えた。そして、背後にいたヴィデ
ィアに小さく何かを囁いたのだった。
無表情のまま彼女はゆっくりと私に近づき、私の下腹部を指で撫でながら、床に置いた剃毛用の
剃刀を手にした。
「…ほら、亜沙子さんの陰毛の中に蝶が隠れているでしょう…こんな淫毛は邪魔ですよ…」
椅子に座って、葉巻を燻らせるヤスオが薄笑いを浮かべながら言った。
「やっ…やめて…」
その私の言葉を無視するように、剃刀を手にしたヴィディアは、私の茂みに覆われた恥丘のふく
らみにゆっくりとクリーム状の泡を丹念に盛りつける。
「…心配しないでください…彼女はきっと綺麗に剃ってあげますから…それに、ほかの男の精液
が滲みた陰毛なんて、僕は必要としない…」
その言葉に、私はなぜか体が火照るような恥ずかしさをおぼえた。
トモユキと別れて、私は何人かの男に抱かれた。ただ、男のものを欲しがった私だったが、陰毛
にあふれ出た白い精液に何も充たされることはなかった。全身が泡立つような肉情に充たされる
ことはなく、澱みきった情欲の記憶に鞭を入れ、空洞の奥底を責め続けることでしか、私のから
だが充たされる方法はないと思ったことも確かだった。