2・キノウの怖さが消ユ-2
「あっ、砂糖が無い。悪いなリリス、ミルクだけで我慢して・・・」
するとリリスは再び床に突っ伏してしまった。
なるほど、無言の抵抗だな。砂糖が入ってないなら飲まない、ってか。
・・・全く、手のかかる奴だ。仕方ないな。
『どこ行くの隆一』
「砂糖買ってくるわ、ちょっと待っててくれ。すぐ戻るよ」
『いや、いいって。別にそこまでしなくても』
「いいんだよ、じゃあラウム、留守番頼むわ」
『じゃおれも行く。リリス、誰か来ても入れるなよ』
ラウムが箱を銜えて俺に持たせ、中に入った。
外出する時はこうしないと目立つからな。ピンクのカラス、なんて見た事無い奴は結構いそうだ。
〜〜〜〜〜
会計を済ませてスーパーから出ると、箱の中からラウムが話し掛けてきた。
『ごめん、リリスが我が儘で』
「気にしなくていいよ。俺、そういうのは別に嫌いじゃないからさ、それにコーヒー淹れるって言ったのはこっちだ」
『隆一は優しいんだね。悪魔がいても平気なの?』
「怖くは無いな。なんか、生意気な妹みたいな感じだ」
『おれには隆一が飼い主でリリスがペットに見えるよ』
「あっはっはっ、あながち間違いじゃないかもな」
言葉を話すペット、か。
ラウムにもよく世話を焼かせてるから、まさにそうだな。
「ただいま、リリス」
『・・・おかえり』
俺を見上げていたが、視線の先は顔じゃなくて砂糖の包みだろう。
挨拶はいいから早く甘いのを飲ませろ、と心の声が聞こえてくる。
『いただきまーす』
ついさっき迄の寝呆けた顔はどこに行ったのか、満面の笑みでコーヒーを飲んでいる。
ミルクの入れすぎで白に近いベージュ色の甘いコーヒー。
『呑気だな、お前。遊んでてもいいのか?』
『焦っちゃいけないって言ったのラウムでしょ。コツコツやればいいの、ああおいしー』
敢えて口には出さなかったが、俺もラウムと同じ意見だった。
ここにもっと居たい、と言ったのはリリスの方だ。こっちからお願いはしてない。
その熱意に負けて承諾したのに、肝心の発言者は早くものんびりしている。
「なあ、リリス」
『ん?なに』
出会って2、3日はまだ俺とあまり話してくれなかったから、こうして普通に話せる様になったのは嬉しい。