魔神探偵〜鼠編〜-2
茶封筒の中には、子泉村への地図と、その依頼内容の詳細、前金に手紙が添えられていた。
今回の依頼内容は、簡単な話をすれば『モノ捜し』である。しかし、単なるモノではなく、かなり物騒な代物。それは……遺骨。
依頼に来る一ヶ月程前に亡くなった夫のモノで、依頼の一週間前になくなったそうだ。それを探し出すのが今回の目的。朝方に目覚め、夫の元へ線香をあげようとした時、それに気付いたのだという。そしてもう一つ。いなくなった息子を探して欲しいとゆう依頼。依頼の二日前から帰らない息子を探して欲しいというないようだが、その息子は既に15歳。行方を眩ますような事はないと思う。しかし、息子さんは旦那さんをいたく慕っていたらしい。多恵さんはそれを心配し、二つ依頼したのだと思われる。俺も事件・事故の線で捜査するつもりだ。
「はぁ…」
与えられた部屋のベッドで横になる。頭がいっぱいいっぱいで、もう悲鳴を上げそうだ。そして、ドタドタと階段を勢い良く駆け上がってくる足音が、やけに耳障りだ。木造の為、嫌なくらい良く響く。
「お兄ちゃん!」
「あんじゃい」
とりあえず体勢はそのまま。布団の上で大の字。移動する気なんかさらさらない。
「ちょっと!真面目な話なんだから!」
「はいはい…っと」
気はないが、怒らせると怖いので、座る位に留めておこうか…。
「外外!外見てよ!」
美姫の様子がおかしい事に今更気付く。言われるがままに、足を窓際まで運び、カーテンを開けた。
「なんだこれ……」
松明を片手に持った村人らしき人たちが、大勢で家の玄関の前に群がっている。少しヒステリックな多恵さんの声が、外から聞こえたので、窓を僅かに開けて会話を聞くことにする。
「ちょっとお兄ちゃん!」
「しっ」
唇に人差し指を当て、美姫の顔を見る。一応分かったらしく、それ以上は何も言わなかったので、会話を聞くのに専念する。
「分かっておるのか!呪いが降るぞ!」
村人の一人の声が響く。声質からして若くない。村長だろうか?
「そんなことはありません!彼らは私の客人です!」
……つまり、俺たちの事なわけか…。
「この村に、むやみによそものを入れてはならぬと言っているだろう!特に、よそものの貴様はな!」
「そんなこと…あなたに関係ありません!それに、呪いなんてただの迷信です!」
ふと、静寂が訪れた。と、思われたのは勘違いだった。
「また降るぞ……」
そこにいた村人の全てが、松明を上下させながらその言葉を呟き、まるでその姿は、宗教団体の様にも見える。一人一人の声は小さくても、これだけの松明が灯る程の人数なら、それはそれは気味の悪い事だった。
「…………よ」
村長らしき人物の最後の一言は、村民の『降るぞ』とゆう言葉にかき消されて、最後の方しか聞き取れなかった。あらかた「覚えてろよ」とか「覚悟しとけよ」みたいな感じだと思う。
俺は、村人達が恐れる呪いについての情報が欲しかった。村人の姿が松明だけしか見えなくなると、多恵さんに呪いの事を聞くために、一階の玄関まで足を運ぶ事にした。
「あら……誓司さん……」
「少し…いいですか?」
「…………」
ためらった表情を見せながらも「こちらへ」といって、俺たち二人を茶の間まで連れて行く。
「どうぞ、お掛けになって下さい」
言われた通り、きれいな漆の塗られた木製の机のを挟み、話を切り出す。
「わかってらっしゃるとは思いますが……呪いについて、聞きたいことが2、3あります。場合によれば増えますが……」
「ええ…どうぞ」
障りを柔らかくし、とりあえず真相の表側を知る必要がある。