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魔神探偵
【推理 推理小説】

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魔神探偵〜鼠編〜-3

「この村の呪いとは…一体どんなものか…教えていただけますか?」
「わかりました…」
静かに目を閉じ、何かを思い出すかの様に、彼女はその重い口を開いた。
「この村では、鼠を神の使いとしています。有り難い存在として崇められています。その鼠は『祈子神』(きしがみ)と呼ばれ、村に悪気を寄せず、村を守っていると言われています。しかし、もしも村民の所為で悪気を呼んでしまった場合、悪気を呼んだものには災いが降り、その村人が作る子は障害者として生まれる…というものです。それが『呪い』。しかもこの村では、子が障害を持って生まれた場合、祈子神様のお怒りだと言って、その子と母を、生け贄として滝に落とさなければいけないしきたりもあります…」
先ほどの村人達の様子からいけば、『悪気』は俺と美姫なわけだ。そして、村人と多恵さんとの会話から察すれば、多恵さんも『悪気』に入る。
 多恵さんの話を聞き、さっきの出来事を思い返す。考えれば周りは見えてくるものだ。
「その祈子神様の絵……とかないんですか?」
閃いた…のは俺じゃない。美姫だ。
「ええ、あれが」
多恵さんは、後ろを向いて天井の下の所を指で示した。そこには、白い鼠の絵が、湖から出てくるところで、少し威厳が見られる。そして、その下にあるタンスの上には、多恵さんの息子さんと思われる人物と、旦那さんのような人が二人で写っていた写真が立ててあった。山から撮った写真だと思ったが、その話題には触れないでおいた。
「誓司兄。これ二十日鼠だよ」
「誓司兄」とゆう言葉に、いつもの美姫の面影はなかった。いつもいつも、なんの前触れもなく切り替わる。
「二十日鼠?すごい勢いで子供が生まれるあれか?」
「そう。形からいって二十日鼠」
美姫の人格の一つである『霧音』の言葉に、俺の頭はぐるぐると螺旋を描き、光が見え始めた。
「また降る……そうあの方は言ってましたよね…」
俺は確かに聞いた。ちゃんと会話が聞き取れるよう、窓まで開けていたし、美姫だって聞いていたはずだ。
「え…ええ……」
バツの悪そうな顔をしながら答える多恵さんを見て、それは確証に変わる。
「あなたのお子さんは障害を持っている。違いますか?」
「…………」
黙りと、目線は机に伏せられたまま。しかし、思い切ったように口を開いた。
「そう…です」
やはりだ。『呪い』は既に降っていた。となれば話は早い。何故「しきたりがある」と言っておきながら、多恵さんはここにいて、息子は生きているのかを聞き出す必要性が芽生える。


「しきたりは行われなかったのですか?」
「ええ。夫はこの村の長の息子……私に呪いが降ると言った方の息子だったんです…しかし…」
「死んだのね」
冷たい瞳は多恵さんをとらえながら、その言葉を口から発した。
「はい…だから村長は私を目の敵にしているんです……。夫が死に、息子が行方知れず…私はどうしたら……」
一筋の涙が頬を伝う。
「まぁ何とかなるわ。こう見えて、誓司兄は結構ヤル男だから。今だって……『二十日鼠』と『呪い』の正体である『障害』で少しはピンときたんじゃない?」
「少し…な」
俺の推測によれば、遺骨を持ち去った犯人と誘拐犯は別のはず…。でも、おそらく絡み…つまり繋がりはある。………と思う。
「俺…もう寝ます」
「あ、はい。わかりました」
その言葉を最後にし、部屋に戻って床に就いた。もちろん、霧音も後ろからひょこひょこついて来ると、さっさと寝てしまう。とりあえず携帯電話の目覚ましを四時にセットする。
 別に眠かった訳じゃない。考える事がたくさんありすぎて、脳が処理しきれなくなっているだけの話。明日の朝、村長の家に行く決意を固めると、睡魔は俺を多い隠した。


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