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ご先祖さまは…女岡ッ引き
【推理 推理小説】

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ご先祖さまは…女岡ッ引き-6

突然…富蔵に異変が、起こった。
「うぐっ!ぐっ…」
短いうめき声を、発したかと思うと…富蔵は苦しそうに喉のあたりを、掻きむしると…倒れた。
詰み上げられていた皿が、音をたてて地面に落ちて砕ける。

ざわめき騒然となる会場…陸奥屋の女中娘が、富蔵に駆け寄った。
「ぐっ…ぐっ…」
富蔵は、まだ食べたりないのか…賞品の山積みされた紅白饅頭の方に、苦悶の形相で、手を伸ばすと…バッタリと、力尽きたように動かなくなった。

意識の失った、富蔵の体が、会場を仕切られた白幕の後ろに運ばれ…その後は、なに事もなかったかのように大会は続けられた…。

最終的に…相撲取りの、雷電と言う名の大男が優勝して大会は幕を閉じた。

「あの、富蔵って男…饅頭を喉に詰まらせて死んだみたいですぜ…」
見物人の立ち去った、会場で最後まで、見ていた銀八が傍らの千歳に言った。
「そ、そう…」
うずくまった千歳は、蒼白の顔で受け答えする。
「なにもあそこまでして饅頭を食べなくてもよかったのに…饅頭で死んだんじゃ仏さんには悪いが、浮かばれませんぜ…アレ?姐さんどうしたんですかい?顔色が真っ青ですぜ…」
千歳は、なんとか立ち上がる。

「話しかけないでくれる…思い出すだけで、吐きそう…うっ!」
と、千歳は慌てて口元を両手で押さえた…それから、三日三晩…千歳は寝込んだ。

それから、しばらくして体調のもどった千歳は矢吹に言われて、銀八と一緒に陸奥屋に出向いた。
「これは、これは…今日はまた何のご用で?」
陸奥屋 平兵衛は、いつもと変わらない笑顔で千歳を出迎えた。
「ちょっと、上司から聞いてくるように言われてね…倉の中を見せてくれない、賊の入った倉を」

「倉の中を…?はい、その程度のことなら」
千歳は、陸奥屋に案内されて、倉の中に入った。
「ほとんど…中の物は別の倉に移してしまいましたが」

閑散とした倉の中を見て回った、千歳は一枚の真っ二つに割れた大皿の前で足を止めた。
「この皿…この前来た時は割れてなかったわね?」
「あぁ…それですか、不思議なことに、いつの間にか割れていたんです、【大会の賞品の紅白饅頭を乗せるのに使う予定でしたが…割れていたので別の皿を】使いました」
「別の皿を?」
千歳は、首をかしげた。
「はいっ」
「【倉に移す時に、女中の娘が倉の奥にあったのを見つけたと、言って…一回り小さい大皿を…】」
「ふ〜ん、ところで…その女中の娘は?今日は姿が見えないようだけど?」

「なんでも、【突然…暇がほしいと言って…二日前に店を去ってしまいまして】」
「いなくなった?どこへ行くとか言っていかなった?」
「さあっ…働き者で素直な、いい娘でしたので…引きとめたのですが…残念です」
陸奥屋は、本当に残念そうな顔をした。

陸奥屋を後にした、千歳と銀八は複雑な表情で、江戸の町を歩きながら、陸奥屋で聞いたことを話した。
「奇妙な話しですねぇ…姐さん…」
千歳は、無言で腕を組んだまま考え続けている。少し歩いてから千歳は、口を開いた。
「なーんか、頭の中に引っ掛かっているのよね」

日本晴れの空を見上げる千歳は、いつものように新しい肉桂の根を口にくわえる。
(すっきりしないなぁ…なんとなく…今までのコトがどこかで、つながっているような気がするけど…クエスチョン)

それから…数週間後、目安箱への匿名の投書により…大井川の宿屋に潜伏していた、稲荷党が全員捕縛された☆


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