図書室で先生と。-2--7
「ばか…泣くな…。」
「…!」
涙の伝う頬に雫を掬うように口づける。
一瞬見つめ合って、お互いに少し躊躇いながら、唇を合わせた。
……深く、強く。
触れるだけと思っていたのに、自然と唇が啄むような動きをして橘もそれに応えてくれる。
一瞬、軽く舌が触れ合って、それを合図のようにおそるおそる舌を絡める。
少し激しいキスをして、最後にチュ…と音を立てて唇が離れる。
(ったく…。なに、止まらなくなってんだおれ……)
突然の出来事に赤面して下を向く橘。
「あんまかわいい顔すんなよ…」
「!……かわっ…」
「…この続きは、また今度な?」
「…!!」
「………橘、今なに想像したよ。やーらしー」
「な!!せ、先生が変なこと言うからぁ…!」
いやらしいのはおれの方か。
そう思いながらいつもの二人のやりとりをしておれのほてった感情を紛らわせる。
それから橘の頭をくしゃっと撫でる。
「…からかってごめん…。」
「先生…。」
「おれ、ちゃんと、本気だから…な。」
「……はい。」
それからすぐに車を発進させて橘を送り届けるまで、他愛のない会話に少しだけいつもと違う距離感が混ざる。
正直、おれはいつまでこの距離感を保てるのか。
そんな不安を覚えながら、この日から橘とおれは『先生と生徒』から『彼氏と彼女』になった。
橘のくるくる変わる表情と素直な言動に翻弄される日々が始まるわけだけど…。
…ここからの話はまたの機会に。
あ、補足として。
おれは今後、宮下先生とどんな顔をして会えばいいのか…、そんな事を真剣に悩む事になる。