図書室で先生と。-2--6
「彼女は居ないけど、好きなコはいる。」
「ぇ…?」
かぁっと赤面しながらも潤んだ目で、その凛とした瞳でおれの目をまっすぐに見てくる。
まるでこの車内だけが異空間にでもなったような感覚で、瞬きひとつがスローモーションのように感じる。
「おれは橘が好きだ…」
何度目かの瞬きの後におれはそう告げた。
沈黙が二人を包む。
目が離せないってこういうことを言うのだろうか。
「…うそ…」
橘が搾り出すようにようやくそれだけを呟く。
「信じられないだろうけど…本当。」
「………」
「…でも、お前が嫌ならおれはこれ以上進まない。」
それは突然の告白だったかもしれない。
でもおれの中はもう橘の事だけでいっぱいだった。
驚いて、複雑な表情をしている橘。
「…悪い…、びっくりしたよ…な…」
そう言いながら頬に添えていた手をどかそうとした時、橘の手がおれの手に重なる。
「私…」
「…」
「私も…ずっと先生の、事…好きでした…」
夕焼けと宵闇の中間、うっすらと陰る車内で、お互い信じられない出来事が起こってて。
堪らずおれは橘の頬に添えていた手を後頭部に回して強引に引き寄せる。
「…っ!」
必然的におれの肩に橘の顔があり、おれは橘の耳元に顔を埋める。
「なぁ、橘…?おれ、これでも先生だから…色々我慢させたり、普通に付き合うとかきっとできないけど、それでも…いいか…?」
「……せん…せ…」
そして、おれの肩でしっかりと頷く橘。
少し身体を離し、橘の顔を覗き込む。
瞳に溜まった涙はみるみるうちに溢れてこぼれ落ち、その上気した頬を濡らす。