「二度目の罪」-3
「……ふっ」
小さく笑って九木は、舞の頬に流れた涙を舐め取ってやる。
「可愛い人だ」
墜ちてきた舞の胎内をかき回しながら九木は呟く。
「清楚で、淫らで、その上、男をかき乱す」
舞の中に埋め込まれた男根がピクピクと震えて終わりが近いことを告げた。
「んっ、あぁっ!」
乳頭を刺激されながら、迸る精に舞の子宮は収縮し絶頂を迎える。
深く刺さった性器は、舞の奥深くまで子種を注ぎ込んだ。
「ふぁっ…んっ!」
その、あまりに強い刺激に、恍惚を迎えて舞は、真っ白な世界へ飛び込んでいった。
ゆっくりと髪を撫でる指先が優しい。
ベタ付いていた筈の躯は、気を失っている間に拭き清められ、襦袢も清潔なものに取り替えられていた。
「…目が覚めましたか?」
九木の問いに、舞は小さく頷いた。
「何か、飲みますか?」
言われてみると確かに喉が渇いていた。
再び頷くと、九木の唇が近づいてきて、舞の唇を塞いだ。
「んっ、くっ…」
口移しで流し込まれる冷たい水に、舞の躯は浄化されていく。
「九木さ…ん?」
何かを問おうとしたようだが、舞の瞼は重く、彼女を再び眠りの世界へ誘(いざな)おうとしていた。
そんな舞に微笑んだ九木は、掌で瞼を撫でる。
瞬く間に眠りについた舞の髪を一房掬うと、九木はそっと唇を寄せた。
眠る舞を後にして、九木は静かに部屋を出た。
しっとりと濡れきった部屋の中とは対照的に、この季節ならではの乾いた空気が九木を包む。
ふと、顔を上げるとこの見世の主の姿があった。
午後の光が柔らかに二人に注ぎ込む。
顔を上げた楼主の瞳が自分を捕らえた気がして九木はドキリ、とした。
逆光で見にくいのだろう。楼主の瞳がゆっくりと細められる。
─あの日、この見世で犯されてから九木の心は彼に囚われたままだ。
極度の緊張下に置かれた被害者は、犯人に愛情に近い感情を持つことがあるという。
それは、一時的なもので、その状況から解放されると同時にその気持ちは憎しみへと転換されるらしいが、九木自身は自分がいつ解放されるのか、それとも本当はもう解放されているのか分からなかった。
そして…、自分が舞にどういう感情をぶつけているのかも。
因果は回っているのか、それとも新しい局面に立たされているのか、まだ誰にも分からない。
九木は、主に向かってゆっくりと頭を下げると、廊下を後にしたのだった。