「完全犯罪@救急車」-1
彼の頭から血が流れている。
彼は頭部を打ちつけ意識を失っている。
だけど、ユウは「いつものことだから」ってつぶやくだけ。
わたしは聞いた。
「いつものことって、どういうこと?」
ユウを刺激しないように穏やかに聞いた。
彼をめぐってわたしとユウはこの1年間、争っていた。
もとはと言えば、わたしの彼だったのにユウが割り込んできた。
今日はユウのマンションにわたしが乗り込んで
案の定、すごい修羅場。
黒の下着姿で現れたユウにわたしが
「泥棒!返してよ!」なんて引っ掻いたものだから
彼はふたりの間に入り、わたしに「落ち着け」となだめていた。
ユウが「どいてよ。関係ないでしょ」って彼を押した後
鈍い音が部屋に響き、今の状況が訪れた。
わたしは携帯を取り出し救急車を呼ばなきゃと
焦りまくり。だけど、うまく番号が押せない。
一方、ユウは落ち着き払っている。
「彼っていつもこうじゃない。
ベッドの上にごろんと横になって動かない。
今だってそうよ。きまり悪いものだから倒れたふり。」
ユウは白い肌に黒い下着姿で、ぞくっとするほどセクシー。
わたしは彼女の言葉と姿が理解できない。
冷静にユウの話を聞こうと思った。
彼は・・救急車は・・あとでいいや。
「どうして、黒なんかつけてるの?」
「どうしてって彼の希望にきまってるじゃん」
「希望?いつ希望したの?」
「昨日の夜、電話で」
頭が混乱してきた。
わたしと付き合っている彼が
ユウともつきあっているのは知っていたけど
わたしには何の要求もしないのにユウには衣装の指示をしていたみたい。
「アイには明日は何を着て、身体をしっかり磨いて待っろって
そんな電話しないの?」
「しないよ。前日に電話なんてない。」
「ほんと?」
「連絡なしにピンポーンだもん。」
沈黙・・。どうやら彼はわたしよりユウとの時間を大事にしていたみたい。
わたしの心はずたずた。