「賭けの代償」-1
パサッ、パサッ…
勝負の重さとは裏腹に、手札は軽やかに捨てられていく。
二人という人数のせいか、大半の札は捨てられ、手元には僅か数枚を残すばかりになる。
「ふぅっ…」
少女が小さく溜息をついた。
彼女の手元に残されたのは、ハートのエースと悪魔のジョーカー。
次に、男が引くカードで少女の運命は決まる。
単純なゲームだからこそ、勝負はスリリングで、その賭の行方を容赦なく突きつけるのだ。
「あっ…」
少女の声を宙に残して最後のカードが引かれていった。
場に投げ出されたのは、ハートとスペードのエース。
「勝負あったな」
この見世の主がニヤリと笑う。
「俺の勝ちだ」
その言葉に、少女は…、舞は下を向いて唇を噛む。
その耳元に楼主は唇を寄せると何事かを囁いた。
ぴくん、と舞の肩が揺れたが、やがて諦めたように舞は小さく頷いたのだった。
翌朝、舞は楼主の部屋をおとなった。
「これに着替えろ」
と、舞に渡されたのは一着の服であった。
「せ、セーラー服!?」
「そうだ。お前はこれを着て、客の前で脱いで貰う」
所謂、ストリップと言うものを、賭の代償として彼は舞に強いたのだった。
「そんな…」
戸惑う舞を楼主は一蹴した。
「賭に負けたのはお前だろう」
それを言われると、舞は何も言えない。息を一つついて襦袢を脱ぐとセーラー服を手に取った。
この街に来る前に着ていたブレザーとも、今のワンピース型の制服とも違い、セーラー服は妙に艶めかしかった。
「…なかなか似合うじゃないか」
楼主の言葉がこそばゆい。
「じゃあ、脱いでみろ」
言われて、舞はスカーフに手をかけた。
「待て」
しかし、直ぐに楼主からストップがかかる。
「それは、襟とスカーフが別パーツになっている。その二つを残し脱ぐんだ」
その言葉に従い、舞は前の小さなボタンに手を掛けた。
外す前に、チラリと楼主の顔を窺うと、彼は満足げに頷いた。