初夏のすれ違い / カラダ編-16
「…てことは、だ。
その細いのを突っ込まれたワケか、ケツに?
それでもお前はイッちゃう、ってか」
一番キライなおもちゃの話をしているはずなのに、否定ができない。
「あとは?
あとは何を突っ込まれた?
……まさか」
テーブルに置いた手首をぎゅっとつかまれて身が引けない。
ものすごい目力で覗き込まれた。
とうとう、兄妹最大のタブーが明るみに出たのだ。
排泄器官であるはずの後ろのアナでのセックス。
「…っ…」
「…信じらんねぇ」
「…ごめ、なさ…」
「…なんで謝んだよ?
俺は…俺は関係無ぇし」
びく、と亜紀子が震える。
なぜ謝罪の言葉を漏らしたのか自分でも分からなかった。
サクが関係無いのは確かだし…。
「…サク…
あたしね、…すごい嫌だったの。
気持ち良いけど、全然気持ち良くなかった。
すごく、辛かった…」
「なんだよそれ…
ワケ分かんねぇ…」
そう言いながらも、サクは手首から手を動かして、亜紀子の手をぎゅっと握ってくれた。
こんな場所で泣きたくない、と思いながらも、まだまだ吐き出したい過去がある。
「でね、…お兄ちゃ…ね、その時に…アレ、してきて…」
「…アレ?」
「…その…か、んちょぅ…」
ぎうっ、と握る力が強くなった。
サクの目を見ると…
同情しながらも興奮しているのが分かる。
たまにちらと見えるのは…嫉妬だろうか。
「…サクも、したい?
サクもあたしに…アレ、したい…?」
震える声で聞くと、逡巡と欲望の色を隠しきれないまま、サクは絞り出すように言った。
「お前が嫌ならしない」
その力強い言葉に、亜紀子はしばらく涙を流し続けた。
サクは手をつないだまま、じっと見つめてきている。
それは、周囲からの目線が痛いせいもあったのだが。
亜紀子は、この前も結衣とカフェにいる時に泣いちゃったな、と思う。
いつの間にこんなに泣き虫になったんだろう、と。
やっと涙が引いてきて、亜紀子は、ぼそっと口を開いた。
「…サクったら、今まで散々好き放題してきたくせに、よく言うよね」
それは、幼馴染みの前で醜態を見せた照れ隠しでもあったのかもしれない。
そして、先程の言葉を信じていないわけではないが、でもやっぱり、一言くらい反論せずにはいられなかったから。
怒られるかと覚悟したが、サクの方も矛盾を感じていたようで、目が合うと軽く肩をすくめてきただけだった。
ほっとして、素直になる。